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大分トリニータ 中川寛斗 一番若く、一番走る ベテランの決意 【大分県】

大分トリニータ 中川寛斗 一番若く、一番走る ベテランの決意 【大分県】

 いつもなら問いを投げかけると独特の言葉が次々と返ってくる。中川寛斗はサッカーを自分なりの角度から捉え、時に意外なたとえを交えながら語る“哲学者”のような選手である。だが、この日の言葉はなかなか出てこなかった。

 ルヴァンカップ1次ラウンド1回戦。大分トリニータはJ3のロアッソ熊本に0―2で敗れ、公式戦3連敗となった。今季6試合で5度目の無得点。中川は長い間を置いて、「……もどかしいっすよね」と絞り出した。

 重かったのは敗戦そのものだけではない。中川が見つめていたのは、結果の奥にあるチームの姿だった。「現状が全てだと思う。どこかで誰かが、自分たちの立ち位置を勘違いしている部分もあると思う」。公式戦3連敗を通して突きつけられた現状。それを戦術の不具合だけで片付けることを中川は拒んだ。

「カップ戦の敗退はチームの現状の姿」と語った

 豊富な運動量と高い戦術理解を持つ中川は、ピッチ上で人と人をつなぐ。ボールを動かし、味方の立ち位置を整え、試合の流れを読む。だからこそ戦術の重要性は誰より理解している。それでも、この日の口から何度も出たのは「プロ」という言葉だった。「何からやるというより、まず『プロとは何なのか』というところだと思う」

 自分たちの給料はどこから生まれているのか。誰がチケットを買い、誰が応援し、誰がクラブを支えているのか。その上でピッチに立つ責任をどこまで背負えているのか。中川の問いは、自身を含めた選手一人一人へ向けられていた。「努力していても必ず報われるわけじゃない。プロは残酷な世界なので。それでもやり続けられるやつが、この先も残っていく」

 技術が足りない、戦術がかみ合わない。それなら練習で修正できる。しかし中川が危惧しているのは、その土台となる覚悟だった。練習では控え組が主力組を上回る場面がある。紅白戦で結果を残す選手もいる。それなのに公式戦になると普段の力を出せなくなる。「一発勝負でどれだけできるか」がプロであり、そこで生まれるプレッシャーや責任まで引き受けなければならないという。

練習から監督の意図をくみ、100%の力を出し切る中川

 「本当に、生きるか死ぬかの世界だと思っている」。厳しい言葉である。ただ、その矛先を若手や仲間だけに向けないところに中川らしさがある。「僕も含めて」と何度も付け加えた。

 熊本戦でも周囲へ声を掛け続けた。しかし、思いは思うように伝わらなかったという。強く要求すれば相手が縮こまり、戦術を意識させ過ぎれば本来の良さが消える。「僕の伝え方も悪かった」。チームへの危機感と同時に自らの力不足も受け止めた。

 では、経験を積んだ中川は何をすべきなのか。返ってきた答えは、いかにも彼らしかった。「一番若くあることですかね」。ベテランだから一歩引いて全体を見るのではない。一番走り、一番エネルギーを出す。かつて大分でプレーした野村直輝や梅崎司を思い浮かべ、「2人が今いたら、戦術よりも一番若くプレーしていたと思う」と語った。

 経験を重ねるほど賢くなる。試合も読めるようになる。だが、その賢さが熱量を上回ってはいけない。公式戦3連敗、6試合で5度の無得点。チームが掲げる「湧き上がるサッカー」は、まだ十分な熱を帯びていない。だから中川は戦術ボードより先に自分自身を動かそうとしている。
 一番走る。一番声を出す。そして、一番若くある。31歳のベテランが示そうとしているその姿が停滞する大分をもう一度“湧き上がらせる”最初の火種になるはずだ。 (柚野真也)


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