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大分トリニータ マテウス・レイリア 熱意で動いた背番号10 【大分県】

大分トリニータ マテウス・レイリア 熱意で動いた背番号10 【大分県】

 一度は消えかけた移籍話が、わずか数日で現実になった。その舞台裏にあったのは、一人の選手を必要とするクラブの熱意と、それに心を動かされた一人の選手の決断だった。

 J1水戸から大分トリニータに加入したFWマテウス・レイリア。16日にチームへ合流すると、わずか3日後の札幌戦で先発した。背番号10はスピードに乗ったドリブルで前へボールを運び、ゴール前では有馬幸太郎への鋭いパスで好機を演出。ボールを失えば素早く切り替え、相手を追った。新天地での第一歩には、マテウスのサッカー観が凝縮されていた。

 大分が求めていたのは、まさにその姿だった。開幕から得点力に課題を抱える中、吉岡宗重スポーツダイレクターは前線の補強を模索していた。マテウスは以前から候補に入っていたが、本人にはJ1でプレーを続けたい思いがあり、一度は獲得を断念しかけた。それが12日の大宮戦後に急転する。可能性があると知った吉岡SDは、その夜に代理人と連絡を取り、翌13日には水戸へ向かった。

大分で新たな一歩を踏み出した

 直接会い、大分が目指すサッカーとマテウスに担ってほしい役割を伝えた。「一日考えて、代理人とも話して回答をもらえれば」。そう告げた吉岡SDに対し、マテウスはその場で「行く」と決断した。そして翌日に吉岡SDと同じ便で大分へ向かおうとしたほどだった。

 マテウスの心を動かしたのは自分を必要としてくれる人の熱だった。「いろいろなオファーがあった中で、吉岡さんが直接会いに来てくれた。どういうプレーをしてほしいのか具体的なプランがあり、四方田監督からも直接電話をもらった。その熱意に心を動かされた」

 水戸では先発の機会が少なく悩んでいた。だからこそ、新天地で自分に何が求められているのかが明確だったことは大きかった。四方田修平監督についても「どんなプレーを求めているのか、細かな部分まではっきり言ってくれる」と信頼を寄せる。

 求められているのは得点だけではない。守備では強度の高いプレッシャーを掛け、攻撃では適切なポジションを取り、ボールを持てば前へ運ぶ。吉岡SDは「前への推進力とゴール前での質」と期待を口にする。そして、もう一つ高く評価するのが献身性である。マテウスは日本で5年間プレーする中で、攻撃の選手であっても守備を怠らず、チームのために走る重要性を学んできた。得点やアシストだけを追い求めるのではない。仲間のために走り、自らが動くことで周囲を動かす。それがマテウスのサッカーだ。

吉岡SDと談笑するマテウス

 札幌戦では、その片りんが早くも見えた。マテウスがボールを収めれば味方が前へ走り、ドリブルで運べばチーム全体の重心が上がった。吉岡SDは、その変化を「攻撃の火種」と表現する。一人ですべてを変える必要はない。一人のアクションが二人目、三人目を動かし、やがてチームを変えていく。大分がマテウスに託した背番号10には、そんな期待が込められている。

 「結果を出して恩返しをしたい」(マテウス)。必要とされたから大分を選んだ。ならば今度はピッチでその思いに応える番である。まだ合流したばかり。連係も互いの理解もこれから深まっていく。停滞しかけた攻撃に小さな火は灯った。その火をゴールへ、そして勝利へと燃え広がらせられるか。マテウスの新たな挑戦は始まったばかりだ。 (柚野真也)


大会結果