大分トリニータ マテウス・レイリア 熱意で動いた背番号10 【大分県】
サッカー
全国高校サッカー選手権大会への切符は、ただ一枚。10月17日の県予選となる大分県大会開幕を前に、シード8校を紹介する。第7回は県高校新人大会、県高校総体はいずれもベスト8。あと一歩で4強を逃してきた大分工業が、100人を超える部内競争で大会に挑む。
県高校新人大会、そして県高校総体、大分工業はいずれも準々決勝で姿を消した。県4強まであと一つ。その距離を縮めるため、この夏、松尾賢一監督が選手たちに求めたのは、技術や戦術だけではなかった。練習に向き合う姿勢から見直し、チームそのものを鍛え直した。
素走りのメニューを増やし、苦しくなってからもう一歩を踏み出せる体力と精神力を磨いた。一方で攻撃練習にも多くの時間を割いた。セットプレーやサイド攻撃を繰り返し、ゴールまでの道筋を増やしてきた。
前線には得点力のあるFW日野那音(3年)がいる。MF本田敬恭(同)はサイドを駆け上がり、攻撃に勢いをもたらす。正確なキックを武器とする矢野伊織(同)もセットプレーなどで違いを生み出せる存在だ。松尾監督は攻撃陣に「前期の(OFA)リーグ戦のように点を取ってくれれば」と期待する。

ただ、今年の大分工業を語る上で興味深いのは、突出した一人を中心につくったチームではないことだ。「飛び抜けた選手がいない。だから、いろいろな選手を組み合わせながら力を伸ばしてきた」(松尾監督)。その言葉を強みに変えられるだけの土壌がある。部員100人を超える県内屈指の大所帯だ。
チームはA、B、1年生主体のCに分かれるが、その序列は決して固定されていない。毎週のように選手が入れ替わり、上のカテゴリーを目指して競争する。昨日までBだった選手がAへ食い込み、下級生が3年生からポジションを奪うこともある。今大会を戦うメンバーにも1、2年生が半数近く入る可能性があるという。
夏場は県高校総体を経験した選手と下級生を積極的に組み合わせ、実戦を重ねた。目先の勝敗より、選手を試し、可能性を探ることを優先した。「誰が出ても戦えるチーム」をつくるためである。松尾監督は「みんな、いつ出てもいい準備はできている」と手応えを口にする。

もちろん最後の大会を迎える3年生の存在は大きい。就職試験など、それぞれが卒業後の進路と向き合う時期でもある。サッカーだけに時間を使えるわけではないからこそ、一日の練習、一度のプレーに対する意識も変わってきた。「限られた時間の中で自分たちのやるべきことをやろうとする部分は出てきた」と松尾監督は感じている。
そして、もう一つの武器がある。明るさだ。松尾監督のもとで「応援されるチーム」を掲げ、以前にも増して前向きな空気が生まれた。ミスを引きずるのではなく、仲間が声を掛け、次のプレーへ向かう。その雰囲気を大一番でも失わないことが重要になる。「選手たちのいいところである明るさを、試合の中で発揮してほしい」(松尾監督)。
では、ベスト8の壁を越える秘策はあるのか。松尾監督は笑って答えた。「秘策はない。もう応援するだけ」。100人を超える競争の中から選ばれた11人がピッチに立つ。その背後には、同じ場所を目指して汗を流してきた仲間がいる。特別な一人に託すのではない。走力、得点力、下級生の台頭、そしてチームを包む明るさ。積み上げてきたものを束にして戦う。
何度も目の前で閉ざされてきた4強への扉。その扉を今度こそこじ開けるために「誰が出てもやれる」100人の力で最後の冬に挑む。(柚野真也)
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