グッドルーザー 野球 明豊 途切れた連覇 受け継ぐ覚悟 【大分県】
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マウンドで感情を爆発させるタイプではない。だが、勝負どころになると、その右腕は静かに熱を帯びる―。第108回全国高校野球選手権大分大会。13年ぶり16回目の夏の甲子園出場を決めた大分商業。その中心にいたのがキャプテンでありエースの平田玲翔(3年)だった。
準々決勝の佐伯鶴城戦では、侍ジャパン元監督で北海道日本ハムファイターズ編成最高責任者の栗山英樹氏をはじめ、12球団のスカウトが視線を送る中、自己最速となる152キロを計測した。だが、その数字以上に評価を高めたのはボールの質と勝負どころで力を発揮する投球だった。
栗山氏は「スピードももちろんですが、それ以上にボールの質が本当に素晴らしい。あれだけ質のいいボールを投げる投手はなかなか出てこない」と絶賛する。さらに打者としても「188センチの大きな体でありながら体の使い方が柔らかい。自分の感覚を持ち、ここ一番で何をすべきかを理解している」と高く評価した。

その真価が最も表れたのが準決勝の明豊戦だった。四回二死二、三塁。試合の流れが大きく傾きかねない場面でマウンドへ向かう。「ここを抑えれば流れは絶対にこっちへ来る」。迷いはなかった。大会直前に習得したスプリットを武器にロングリリーフを務め、6連覇を狙う王者を相手に堂々と腕を振った。
「本当に明豊さんが相手だったからこそできた試合だった。これまでずっと負け続けてきた相手だったので、『絶対に明豊を倒してやる』という気持ちで試合に入った」。その言葉におごりはない。九回に同点へ追い付かれても、「やっぱり明豊さんは簡単には終わらないという怖さを感じた」と相手への敬意を口にする。そしてサヨナラ勝ちを収めた後も、「自分たちだけではつくれない試合だった。本当に明豊さんには感謝している」と振り返った。相手をたたえ、自分を飾らない。その人柄はプレーにも表れている。
決勝では、その明豊戦で投げ続けたスプリットの影響で右手中指にまめができた。痛みを抱えたまま迎えた津久見戦。多くの投手なら持ち味を失う状況だったが、平田はスプリットを封印し、スライダー、チェンジアップ、カーブを組み合わせながら試合を組み立てた。「スプリットを投げるとかなり痛かったのでチェンジアップで対応した。投げられる球種を組み合わせながら抑えることを考えた」。痛みに耐えるのではなく、その日の状態に合わせて最善を探す。その柔軟さこそが平田の最大の武器なのかもしれない。

那賀誠監督は、その才能を「感覚」という言葉で表現する。「指に負担をかけないようにボールを切る感覚や、その時の体のバランス、腕の振りを瞬時に調整できる。普通の投手ではなかなかできない。平田は反復練習を数多くこなすタイプではないが、自分が思い描いた通りにボールやバットを扱える。本当に珍しい選手」
決勝でも五回から送り出した理由はシンプルだった。「もう平田が投げるしかないと思っていた。100%の状態で決勝を迎える投手なんて全国どこにもいない。彼ならゲームを壊さずにまとめてくれると信じていた」。その信頼に応え、六回二死満塁では相手四番を二ゴロに打ち取る。試合後、平田は「ああいう場面は自然と集中力が高まる。速い球を投げようとしているわけではなく、気持ちが入った結果として球速が出ているだけ」と淡々と話した。
152キロ右腕でありながら、本人は数字を追わない。「150キロを出そうと思って投げているわけではない。チームに必要な場面で投げた結果として数字が出ればいい」。その言葉は、平田という投手を最もよく表している。
甲子園でも目指すものは変わらない。「自分一人が暴れるというより、大分商業というチーム全体で暴れてきたい」。派手な言葉ではない。しかし、その一言には、キャプテンとして仲間を信じ、勝利を最優先に考える覚悟が詰まっている。
152キロは才能の証明かもしれない。だが、平田を特別な投手にしているのは、その数字ではない。相手への敬意を忘れず、状況に応じて自らを変え、最後は必ず「チームが勝つため」を選ぶ。その野球観こそが、この夏、大分商業を甲子園へ導いた最大の理由なのだ。 (柚野真也)
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