全国高校サッカー選手権県予選特集 シード8校を徹底紹介(1) 大分 きれいごとを捨て勝ちにいく 【大分県】
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全国高校サッカー選手権大会への切符は、ただ一枚。10月17日の県予選となる大分県大会開幕を前に、シード8校を紹介する。夏の県王者、連覇を狙う強豪、頂点をうかがう実力校。それぞれが積み重ねてきた時間と最後の冬に懸ける思いに迫る。第2回は全国高校選手権3大会連続出場を目指す大分鶴崎。県高校総体はベスト8に終わり、挑戦者として再出発する。
3大会連続の全国高校サッカー選手権出場を目指す大分鶴崎に、「王者」という言葉は似合わない。少なくとも首藤謙二監督はそう考えている。「お前らは県高校総体ベスト8のチームだよ。ここからはい上がるしかない」。
6月の県高校総体は準々決勝で敗退。2大会連続で冬の全国舞台に立ったチームにとって、悔しさの残る結果となった。しかも昨年の全国高校選手権で先発した選手は限られ、今季は経験値でも過去2年とは異なる。だから首藤監督は、先輩たちが築いた実績をいったん切り離した。「2連覇したのは先輩たち。今の県チャンピオンは自分たちではない」。現在地を直視することから秋への再出発は始まった。
夏休みは強化期間と位置付け、県外の交流試合で全国レベルの強豪と実戦を重ねた。そこで得たのは自信と危機感の両方である。「自分たちも十分にやれる」という手応えがあった一方、球際の強さ、ルーズボールへの反応、セカンドボールの回収では全国常連校との差を感じた。勝負を分けるのは華麗なプレーだけではない。五分五分のボールをどちらが自分たちのものにするか。その地道な攻防に、もう一段の強さが必要だった。

攻撃の中心となるのは山下紫凰(3年)だ。前への爆発的な推進力を武器とし、1人で局面を動かせる存在である。当然、相手も警戒する。スペースを消され、複数人に囲まれる場面は増えるはずだ。そこで首藤監督が求めるのが、山下の次の進化である。「紫凰が相手を引きつけた後に周りを使えるようになれば、もっと嫌な選手になる」。山下をワイドに置くのか、中央で使うのか。場合によっては2トップ気味の配置も考える。エースを固定するのではなく、相手の守備を見ながら最も怖い場所へ送り込む。
その破壊力を引き出すには周囲の働きが欠かせない。昨季は中盤に1人で時間をつくれる存在がいたが、今年は「2人、3人で時間をつくる」のが基本となる。中盤がボールを動かし、山下が走り出した瞬間を逃さず縦へ差し込む。前線からの守備でも複数人が連動し、高い位置で奪って一気にゴールへ向かう。突出した1人に依存しないことが、今季のチームの生命線となる。
ただ、県初戦を勝ち抜くには勢いだけでは足りない。県高校総体の敗戦を踏まえ、首藤監督が最優先に掲げるのは守備の再構築だ。「うまくいかないときに0で抑えて、なんとか1点をもぎ取る試合も出てくる」。相手を押し込んだ状況からカウンター一発で失点する展開は避けたい。攻撃でも引いて守る相手を崩すためにサイド攻撃とクロスの質を磨く。どんな展開でも1点を奪い、1点を守れるチームへ。それが秋までに求める完成形である。

県予選では県高校総体より試合時間が10分長くなる。それも粘り強くボールを動かす大分鶴崎には追い風になり得る。だが、首藤監督は「結局は決めるべきところで決められるか」と本質を突く。時間ではなく、勝負どころの精度が明暗を分ける。
3連覇という言葉は華やかだ。しかし、その看板だけでは1試合も勝てない。「3連覇をしたければ、県ベスト8からはい上がるしかない」。追われる王者ではなく、追い掛ける挑戦者として迎える秋。夏に知った全国との差も、県高校総体で味わった悔しさも、すべてを力に変える。大分鶴崎の3度目の挑戦は、頂点ではなくベスト8から始まる。 (柚野真也)
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