全国高校選抜大会 ハンドボール男子 未完のエース合沢蒼風(大分雄城台 新2年) 覚醒の序章 【大分県】
ハンドボール
NEW!
この夏、大分県から全国へ羽ばたく高校生たちがいる。歓喜も悔しさも力に変え、自分自身の限界に挑み続けてきた選手たちだ。『夏の主役たち2026』は、全国高校総体に臨む県内高校生の挑戦を描く連載企画。
守って、走る。大分雄城台のハンドボールは、その原点を失わずに新しい色を帯び始めている。今年4月、母校に赴任した佐藤友哉監督は、恩師であり前任の平井徳尚監督が22年間かけて築いた「泥臭く粘り強いディフェンス」を受け継いだ。その上で加えたのが、攻撃と速攻の精度である。「私はオフェンスが好きなんです」と笑う新指揮官は、選手一人一人の長所を組み合わせ、どう得点につなげるかを細かく伝えてきた。
成果は全九州高校体育大会で表れた。準々決勝の相手は長崎の瓊浦(けいほ)。前大会の九州王者で、全国選抜でも上位に入った強豪である。立ち上がりは1―6。重苦しい空気が流れたが、チームは崩れなかった。キーパーを中心に守備で粘り、6―6まで一気に追いつく。佐藤監督は「練習してきたことを出せたのは大きかった」と振り返る。
守備で耐え、速攻で流れを奪う。大分雄城台らしい勝ち方だった。キャプテンの酒井幸真(3年)は「瓊浦に競り勝てたことが自信になった」と話す。練習試合でも勝てなかった相手を公式戦で倒した経験は、チームの背中を強く押した。その勢いのまま決勝まで駆け上がった。

決勝では興南に33―36で惜敗した。だが、最後まで一本を諦めない姿勢は消えなかった。佐藤監督は「勝ちたいという気持ちが非常に強かった大会だった」と手応えを口にする。勝てなかった悔しさと、全国で戦える実感。その両方を持ち帰った準優勝だった。
変化の核は攻撃にある。酒井が印象に残すのはカットインの位置取りだ。「ワイドから中に走ってボールをもらう動きができていなかった。そこを意識してから攻撃の流れがスムーズになった」。助走のとり方、走り込む角度、ボールを受ける位置。佐藤監督の細かな指摘が選手の理解を深めている。
ただし、軸は変わらない。佐藤監督は「基本は何よりもディフェンス」と言い切る。オフェンスはシュートのずれやミスがある。しかし守備は、全員が同じ約束事を共有すれば再現できる。14人の誰がコートに立っても同じ守備ができることが、今のチームの強みだ。

酒井も同じ感覚を持つ。「自分たちの持ち味はディフェンス。そこをベースに、オフェンスと速攻も磨くようになった」。攻撃の面白さを知った今も、チームの出発点は守備にある。キーパーのセーブ、ルーズボールへの飛び込み、一本を守る声掛け。その積み重ねが大分雄城台の強さの原点である。
全国高校総体へ向けた課題も明確だ。守備の当たりの強さ、組織の再確認、そしてノーマークシュートの決定力。九州大会では流れをつかみながら、決め切れない場面もあった。全国では守るだけでは勝ち切れない相手がいる。だからこそ、堅い守備で相手を苦しめ、その一瞬を速攻で仕留める形を磨く。
酒井は「相手を30点以内に抑え、ディフェンスから速攻で流れをつくって日本一まで行きたい」と力を込める。母校に戻った若き指揮官と伝統を背負う選手たち。守備の大分雄城台は攻撃という新たな武器を手にした。全国の舞台で、その進化が試される。 (柚野真也)
地区を選択
学校名を選択