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3年生、夏物語2026 サッカー男子 世界基準を知り、次の扉を開く 山下紫凰(大分鶴崎3年) 【大分県】

3年生、夏物語2026 サッカー男子 世界基準を知り、次の扉を開く 山下紫凰(大分鶴崎3年) 【大分県】

 高校最後の夏は終わりではない。全国の舞台へ挑む者、世界を見据える者、新たな進路へ歩み出す者――。その一人ひとりに、この夏だからこそ見える景色がある。勝敗だけでは語れない葛藤や成長、未来への決意を追いかける「3年生、夏物語」。競技人生の節目に立つ高校3年生たちの「今」を通して、その先へ続く物語を描く。

 全国高校サッカー選手権で3試合連続ゴールを決め、大分鶴崎を県勢11大会ぶりの3回戦進出へ導いたFW山下紫凰(しおう、3年)。一躍その名を全国へと広めたストライカーは、その勢いのままUー17日本高校サッカー選抜に選ばれ、7月にはオランダの強豪クラブへ練習参加した。全国で結果を残したからこそ見えた世界。そして世界を知ったからこそ見えた自分自身の現在地がある。

 海外へ渡る前、山下の頭にあったのは一つだけだった。「自分の特徴をどう出すか」。初対面の選手ばかり、言葉も文化も違う環境。それでも臆することはなかった。最終日に行われた練習試合では、ディフェンスラインの裏へ抜け出してゴールを奪った。空いたスペースでボールを受け、積極的に仕掛け、シュートを放つ。これまで積み重ねてきたプレーを、そのまま試合で表現した。「最終日が近づくにつれて自分らしいプレーができるようになった。十分やれるという手応えもあった」。その言葉には自信と同時に冷静な自己分析がにじむ。

オランダで自信を深めたドリブル

 意外だったのは海外への順応の早さだった。言葉の壁はあってもサッカーには共通言語がある。アイコンタクトや動き出しだけで互いの意図は伝わり、不自由さを感じることは少なかったという。さらに海外でプレーしたからこそ日本サッカーの良さも再認識した。海外のサイドアタッカーは一人で局面を打開する力があり、ディフェンス陣も高い技術を備えていた。一方で日本の守備は組織的で規律があり、簡単には隙を与えない。「日本の守備レベルの高さを改めて感じた」と振り返る。

 攻撃面では海外のスタイルの方が自分の持ち味を発揮しやすいとも感じた。「少しでも隙があれば仕掛けられるので海外の方がプレーしやすかった」。世界基準を肌で感じたことで自信は深まった。同時に新たな課題も見えてきた。全国選手権で活躍した今、対戦相手は山下を最も警戒する存在となる。守備を固め、複数人で囲んで止めようとする相手をどう攻略するか。その答えを見つけることが次の成長につながる。

 「2人、3人に囲まれても突破できる選手にならないといけない。相手を引きつけて味方を生かすことも自分の役割だと思っている」。ゴールを決めるだけではなく、攻撃そのものを動かす存在へ。その意識は以前より強くなった。首藤謙二監督も、その変化を感じ取っている。「少し余裕が出てきた。本人もパスを意識するようになったと言っているし、そこは成長している」。

 ただし、課題もはっきりしている。「今年は相手も紫凰を一番警戒している。待っているだけではボールは来ない。自分で一度受けて、味方を使って、もう一度ゴールへ向かう。そういうプレーをもっと増やしてほしい」(首藤監督)。エースだからこそ求められるものも変わる。昨年までは周囲が山下のためにスペースをつくってくれた。今年は山下自身が味方を動かし、自らチャンスを生み出す存在にならなければならない。

日本だけでなく世界から注目が高まる山下

 それでも、首藤監督が最も高く評価する能力は変わらない。「やっぱり前を向いた時の推進力。スピードを落とさず前へ運べる。普通なら止まる場面でも、そのままゴールへ向かっていける。それは紫凰にしかない武器」。

 その推進力の原点は小学1年生から所属したドリームキッズFC(大分市)にある。幼い頃から繰り返したドリブル練習は、いつしか無意識に体へ染み込んだ。中学時代はサイドでプレーすることが多く、「自分はドリブルが得意ではないのかもしれない」と悩んだ時期もあった。しかし高校でFWへ転向すると景色が変わる。サイドで仕掛けるのではなく、中央を一気に突き破るカウンターでこそ自分の持ち味は最大限に生きる。その気付きが今の山下を形づくっている。幼い頃から憧れたのはメッシとネイマール。ボールを持てば観客を沸かせる二人のように自ら仕掛け、違いを生み出す選手になりたいという思いは今も変わらない。

 進路には大学、Jリーグ、そして海外という三つの選択肢がある。オランダで築いた縁も未来へつながる財産となった。それでも山下は焦らない。「自分ならやれる」という自信と「まだ足りない」という謙虚さを同時に持ち続けている。

 全国が注目するストライカーは、まだ完成形ではない。世界を知った今、その視線はさらに高みへ向いている。大分鶴崎のエースとして迎える最後の高校サッカー。その一歩一歩が、世界への距離を縮めていく。 (柚野真也)


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