柳ケ浦高校剣道部 坪根 陽菜花(3年) file.936
剣道
延長戦の末、一本を奪われた瞬間に鹿毛心鈴(かげ・みすず、柳ケ浦3年)は静かに竹刀を収めた。剣道の全九州高校体育大会女子個人戦。県勢最高となる5位入賞という結果だったが、その表情に満足はなかった。「最後まで粘れなかった。攻め急いで、自分から行ったところを打たれた」
敗れた理由を自らの「我慢不足」と言い切った。女子団体も予選リーグ敗退に終わった。しかし最後の一戦は、勝てば決勝トーナメント進出の可能性を残す状況。鹿毛は「まだある」と自分を信じ、気迫あふれる2本勝ちを見せた。「あの時は勝つしかないという気持ちだった。アドレナリンも出ていた」。最後まで諦めなかった姿勢は、敗退が決まったチームに確かな意地を残した。

身長152センチ。剣士として決して恵まれた体格ではない。「もう少し身長が欲しかった」と笑うが、その小柄な体こそが武器でもある。足を巧みに使い、相手の間合いを外す。独特のステップで距離を測り、相手の予測を半歩だけ外したタイミングで勝負を仕掛ける。その鋭さに加え、引き技という新たな武器を磨いている。
「前で一本が取れない相手には、引き技でも勝負できるようになりたい」。相手の心理を読み、一瞬の隙を射抜く剣道。その駆け引きに、小柄な剣士ならではの知恵が詰まっている。高倉寛矢監督は、その強みを高く評価する。「勝負強さが一番の武器。打つポイントを見極めるのがうまいし、距離感の取り方は本当に優れている。持っている力を発揮できれば、インターハイ(全国高校総体)でも十分に勝負できる選手」
ただ、課題も明確だ。「全国ではもっと『我慢の剣道』が必要。耐えるべき場面で耐え切れるようにならないといけない」(高倉監督)。九州大会準々決勝も、最後に我慢しきれず一本を奪われた。その経験こそ、全国へ向けた最大の教材となった。九州の高いレベルを肌で感じ、その舞台で十分に戦えたことは全国への確かな手応えになった。

高校3年間を振り返れば、決して楽な道ではなかった。鹿毛は「きつい稽古もたくさんあった。でも、みんなで声を掛け合って頑張ってきた」と振り返る。柳ケ浦女子として初めて全国選抜大会に出場した喜びも、県高校総体で味わった悔しさも、そのすべてが今の鹿毛をつくっている。
全国高校総体前には国スポ九州ブロック予選、全日本選手権予選と実戦が続く。それらすべてを「全国高校総体に向けた練習」と鹿毛は位置付け、一歩ずつ完成度を高めていく。目標を問われると答えは迷いなく返ってきた。「優勝」。そのために必要なのは「集中力」と「最後まで諦めないこと」。そして、高倉監督が繰り返し口にした「我慢」である。
照準は高校最後の全国高校総体。「全部勝つ剣士になりたい」。小柄な挑戦者は、独特のステップと研ぎ澄まされた間合い、そして九州で得た「我慢」を携え、日本一への一本を狙いにいく。 (柚野真也)
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