国スポ 期待高まるチーム大分 今年も千点以上目指す 【大分県】
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インターハイのあとvol.3 努力でセンスも経験も凌駕した愚直なボクサー 河野泰斗(鶴崎工業3年)
全国高校総体(インターハイ)出場選手のその後を追った「インターハイのあと」。第3回は、卓球からボクシングに転身し、努力を武器に急成長した鶴崎工業の河野泰斗(3年)を取材した。
高校ボクシングにおいて、「練習量と経験は比例する」という格言めいたものがあるが、驚異の練習量で経験不足を補い、インターハイで3位となったのが河野泰斗だ。一発のパンチがクリーンヒットすれば勝負が決まるミドル級において、打たれ強い屈強な肉体と愚直に前に進むインファイターで、ボクシング経験わずか1年と3カ月で全国レベルまで到達した。
高校1年の終わりに卓球部からボクシング部に転部した異色の経歴を持つ河野。「上背がなく、リーチもなく、鈍臭かった」と、自身も認めるボクシングに不向きな普通の高校生だった。さらに、当時は今より体重が13kgも重かった。そんな彼を「来る者は拒まず」をモットーとする飯田育夫監督は歓迎した。「ボクシングに必要なものは志。強くなりたいという思いと自己分析を客観視できる能力」と河野の秘めた能力を見抜いていた。河野は誰に強要されたわけでもなく、全体練習が終わった後に1時間の居残り練習を課し、「みんなに追いつきたい」一心でボクシングに没頭した。
インターハイ3位となった河野泰斗
元々、超がつくほどの負けず嫌いの性分だったが、卓球では勝っても負けても抑揚はなく、何か熱中できることを探していた。そのときに、「いつかやってみたいと思っていたボクシング」の練習を見て、次の日に入部届けを出していた。入部当初はパンチが全く当たらず、相手のパンチを顔に受けて悔し涙を流した。まずはクリーンヒットを当てる、次はコンビネーションから一発、その次は試合に勝つ。一つずつ目標を設定し、クリアすることで「センスや能力がなくても努力で補える」ことを実感し、練習量はさらに増えた。
どんな相手に対しても、下がらずに接近戦に持ち込む。相手より手数を出すスタミナと得意の右フックに磨きをかけ、自分のスタイルを築いた。高校最後の夏に全国の舞台にたどり着き、インターハイ準決勝で今春の全国選抜大会王者であり、九州大会などで3度対戦している相手に判定負け。その後の国体九州ブロック予選でも再戦したが、「同じ相手に何度も負けた。悔しいけどこれが“今”の自分の実力」。悔しさを噛み締めたが、すでに何が足りなくて、何を補うか分かっているようだ。
卒業後は関東のボクシング強豪校に進学する。「全国から高校チャンピオンが集まる。自分は下から数えた方が早い。追いつけるように練習して、大学2年には大学リーグに出場できる選手になる」。これまでのように明確な目標を設定した。
経験の少なさは伸びしろの大きさでもある。何より河野には人一倍の努力ができる能力がある。これからも愚直に真っすぐ道を進む。
新たな目標に向かい、大学でもボクシングを続ける
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Vol.1 ボクシング 安達魁渡(鶴崎工業高)
Vol.2 なぎなた 大分西高
Vol.3 ボクシング 河野泰斗(鶴崎工業高)
Vol.4 陸上 大谷夏稀(大分雄城台高)
Vol.5 陸上 奈須貴子(大分雄城台高)
Vol.6 カヌー 田中智貴(高田高)
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(柚野真也)