夏の主役たち2026 野球 守備で勝利を呼ぶ男 菅原翔空(大分商業3年) 【大分県】
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甲子園出場を決めた大分商業を語るとき、多くの人は最速152キロ右腕・平田玲翔(3年)に目を向けるだろう。しかし、そのエースが本来の力を発揮できる舞台を整え続けた存在がいる。背番号10を背負う米田泰志だ。
第108回全国高校野球選手権大分大会。米田は決勝までの全5試合で先発を任された。役割は明確だった。序盤を丁寧に抑え、試合をつくり、勝負どころで平田へつなぐ。その献身的な役割を米田は最後まで貫いた。
本人に先発が伝えられたのは初戦の3日前。「もともと先発で投げるつもりで準備していたので、『やってやろう』という気持ちだった」。驚きはなかった。与えられた役割を受け止め、淡々と準備を進めた。

初戦も「3回から5回まで投げるのが目安」と伝えられた中で、まず意識したのは試合をつくることだった。3回を無失点に抑えながらも自身の評価は厳しい。「点を取られなかったことは良かったがコントロールはまだ課題。決め球をもっと投げ切れないと(強豪相手では)厳しい」。結果に満足せず、内容を見つめる姿勢が米田らしい。
持ち味は制球力だ。「コーナーを突いて打ち取り、大事な場面で三振を取ること」。最速141キロの直球にチェンジアップを織り交ぜ、打者の狙いを外していく。派手さはない。しかし、一球一球を積み重ねて流れをつくる投球には堅実さがにじむ。
その投球を支える存在が平田である。「自分にはないスピードを持っている投手。フォームを見たり、話をしたりしながら互いを高め合っている」。1年生の頃から切磋琢磨(せっさたくま)してきた仲間であり、尊敬する存在。それでもライバル意識を前面に出すことはない。「先発にこだわるというより、与えられた役割をしっかり果たしたい」。その言葉には、自分が目立つことよりもチームが勝つことを優先する価値観が表れている。

決勝でも、その姿勢は変わらなかった。「今日は絶対に無失点でいく」。そんな思いでマウンドに上がったが初回に失点。「自分の球に自信を持ち切れず、球が浮いてしまった」と悔しさを口にした。それでも1回終了後、平田から「真っすぐで押せる」という声を掛けられると気持ちを切り替えた。2回以降はストレートを信じ、4回まで試合を立て直した。
「本当は5回まで投げたかった。でも球数が多くなってしまって平田に少し負担をかけてしまった」。優勝を決めた直後でさえ、自分よりも後を託した投手陣を気遣う。その言葉からも米田の人柄が伝わってくる。那賀誠監督も、その献身性を高く評価する。「無理に力で押すのではなく、試合をきちんと立ち上がらせることを意識して投げてくれた。自分をアピールする投球ではなく、チームのためにゲームをつくることができる。安心して任せられる投手だ」
冬場は下半身を徹底的に鍛えた。階段トレーニングを繰り返し、投球フォームを支える土台を築いた。「その積み重ねが今につながっている」(米田)。努力は確かな自信へと変わりつつある。甲子園でも目指す投球は変わらない。「コースいっぱいに決まるストレートを投げたい。真っすぐを軸に打ち取ったり、見逃し三振を取ったりできる投球を磨いていきたい」。豪腕ではない。派手なガッツポーズもない。それでも試合の流れを整え、エースへ最高の形でバトンを渡す。その役割を誰よりも理解し、誇りを持って投げ続ける右腕がいるからこそ、大分商業は13年ぶりの甲子園切符をつかんだ。「2年半、一緒に頑張ってきた仲間と一日でも長く野球がしたい」。背番号10の静かな使命感は、聖地でも変わることはない。 (柚野真也)
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