九州大会 重量挙げ女子 九州を制し、日本一へ一直線 乙咩侑未(宇佐2年) 【大分県】
ウエートリフティング
この夏、大分県から全国へ羽ばたく高校生たちがいる。歓喜も悔しさも力に変え、自分自身の限界に挑み続けてきた選手たちだ。『夏の主役たち2026』は、全国高校総体に臨む県内高校生の挑戦を描く連載企画。
全九州高校体育大会の重量挙げ女子48㌔級。春の全国選抜大会を制した宮園こはく(国東3年)は、スナッチ62㌔、ジャーク80㌔、トータル142㌔で優勝した。だが、この日の舞台はゴールではない。宮園にとって九州王者の称号は、夏の全国高校総体へ向かうための通過点に過ぎなかった。
試合は決して完璧な立ち上がりではなかった。スナッチ1本目。頭上でバーベルを受け止めた瞬間、わずかに体が揺れた。立ち上がる際にバランスを崩し、「重いかな」と感じたという。それでも落ち着いて成功。さらに価値があったのは、その後の対応力だった。
宮園は自ら原因を分析する。「バーが前に出ていると感じたので、まっすぐ引くことを意識した。あとは気持ちの部分」。監督の指示を待つことなく、自分で修正した。2本目以降は動きを立て直し、スナッチ、ジャークを合わせた6本全ての試技を成功。全国トップクラスの選手らしい冷静さと対応力を見せつけた。

実は今大会、記録更新を最優先にしていたわけではない。県高校総体では全国高校総体出場権獲得と記録向上を重視した。一方で九州大会は、全国レベルのライバルたちとの駆け引きを意識した大会だった。「県総体は記録を伸ばすことに重きを置いていた。でも九州大会は勝負できる相手がいるので、今回は勝負した」。
重量挙げの魅力について聞くと、宮園は即座にこう答えた。「相手との心理戦。相手が何㌔を申請するか、それに対して自分たちがどうするか。その読み合いがあって、それを上げられた時が楽しい」。重量挙げは単純に重い重量を持ち上げる競技ではない。限られた3回の試技の中で相手の動向を読み、重量設定を駆使しながら勝負を組み立てる競技でもある。宮園はその駆け引きさえ楽しんでいる。
そんな宮園には、競技力向上のために続けている意外な習慣がある。それが「ゴミ拾い」だ。2年生の春、愛媛県での合宿中に出会った富山県の名将から「勝つためには実力だけでなく運も必要。その運を呼び込むためにゴミ拾いをするといい」と教えられた。オリンピアンを育てた指導者の言葉は、宮園の心に深く刻まれた。

以来、毎日欠かさず練習場周辺のゴミを拾っている。「競技だけじゃなくて、競技以外の部分も大事にしている」。ゴミを拾ったから記録が伸びるわけではない。だが、誰も見ていない場所で積み重ねる小さな行動が、自分自身を律する力になる。宮園はその積み重ねを「運を拾う」作業として続けている。会場入りしたこの日も、もちろんゴミ拾いをしてきたという。全国選抜王者となった今でも、その姿勢は変わらない。
見据える先は全国高校総体だ。目標はスナッチ67㌔、ジャーク88㌔。今回の記録を大きく上回る数字を掲げる。その目標達成へ向けては、食事量を増やし体重を乗せること、そして体幹強化を課題に挙げる。さらに、今春から指導体制が変わる中で新しい環境にも適応している最中だ。
全国選抜を制し、九州大会も制した。だが宮園に慢心はない。6本全てを成功させること。ライバルとの心理戦を楽しむこと。そして、誰も見ていない場所でゴミを拾い続けること。その一つ一つの積み重ねが、宮園という選手を強くしてきた。ゴミを拾い、運を拾う。静かな努力を続ける九州女王は、この夏、全国の舞台でさらに大きな記録へ挑む。 (柚野真也)
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