第100回全国高校野球選手権記念大分大会

７月12日　第３試合　２回戦　別大興産スタジアム

明　豊　　１００　１１０　０００　０１｜４

大分工業　００２　１００　０００　００｜３（延長11回）

　今大会、頭一つ抜けた優勝候補とはいえ、夏の大会の初戦の入り方は難しかった。１回にキャプテン管大和（３年）と注目の１年生・布施心海の俊足巧打の１、２番が連続二塁打で鮮やかに先制したが、そこからは大会開幕試合に勝利して勢いに乗る大分工業相手に苦戦した。川崎絢平監督が「ウチの打線がどうこうではなく、相手のピッチャーの投球、気迫が素晴らしかった」と称えた通り、大分工業の日高翔太（2年）が出色の出来だった。

　６回以降は相手エースに封じられ無得点が続いたが、嫌な空気を振り払ったのが副キャプテンの清水翔吾（３年）だった。新チームとなってからは不動の二塁手として名を連ねていたが、今春に入学した布施にレギュラーの座を奪われ、ベンチに座る日々が続いた。「それでも誰よりも練習した。腐らずにチームのために動き、ポジションを取られた布施に対して試合で活躍できるように全面協力をして支えた。なかなかできるものではない」と川崎監督。チーム一番の努力家の行動、振る舞いを見ていたからこそ、大事な場面で命運を託す。

　９回裏から守備固めとして出場した清水に打順が回ってきたのは延長11回２死三塁の場面。「お前みたいに一生懸命努力した奴にチャンスは巡って来る。決めて来い」と打席に送り出した。清水は「絶対に打ってやる。ベンチに入れなかった３年生の思いを形にしたかった」と、この場面でもチームのこと、仲間のことを思い打席に入り、高めの直球を弾き返した。「副キャプテンの重みのある一打」（川崎監督）が決勝点となり、明豊が甲子園への第一歩を踏み始めた。

　ベンチで誰よりも清水に声援を送った布施は、「必ず打ってくれると信じていた。今日もガチガチになっていた僕をリラックスさせてくれたのも清水さん。『お前がエラーしても俺がいるから安心しろ』と言ってくれたから思い切ってプレーができた」と話す。選手個々の能力が高い集団に、仲間を気持ちでつなげる清水のようなバイプレイヤーがいるから、明豊は強いのだ。

決勝打を放ち、ベンチに向かってガッツポーズする清水翔吾

（柚野真也）