大分トリニータ 2試合残して降格、この現実に何を見る

2021/11/25
  • 大分トリニータ

スタイルは確立できたが「大胆さ」が足りなかった

 

 好転のきっかけを手探りで求めていたこの時期。しかし、様々な側面から降格のカウントダウンは進んでいた。まず、開幕戦で負傷した野村直輝がけがを繰り返し、攻撃の核として期待されていた下田北斗もけがで約1カ月ピッチに立てなかった。さらに連戦により選手のコンディションが整わず、先発メンバーを固定できない試合が続いた。戦力差を組織力と戦術の浸透度で埋めてきたチームは、目の前の試合をこなすことで手いっぱい。課題とされた攻撃のパターンの確立も困難を極めた。期待された新戦力が軒並み、力を発揮できずに終わったことは不運だったが、毎試合の決定機の数は相変わらず少なく、シュート数は片手で数えられる試合も少なくなかった。

 

 現状を打破しようと、クラブは積極的な補強を敢行する。早い段階で守備の軸となるブラジル人選手を2人獲得し、夏場の移籍期間に呉屋大翔や増山朝陽らを獲得して挽回を試みたが、起爆剤となるまでには至らず、大きく戦況が変わることはなかった。それでも片野坂監督は「結果が出ないと(チーム状況が)悪いと捉われるが、ベストを尽くす準備をしていた。チームの成長を感じたし、少しずつ前進し、盛り返した時期もあった」と振り返ったように、終盤戦はチームとしての戦い方、選手の特徴を含めて整理できた。32節の仙台戦に勝利し、今季初の連勝で残留への希望が高まったが、勝星から見放された。

 

 後がなくなった鹿島戦では、守備時には最終ラインを5バックに、その前に中盤を4枚並べるという、2枚の分厚い壁をゴール前に築いた。攻撃に転じずれ後方からパスをつなぎ、攻撃を組み立て、ゴールに向かった。これまで築いた戦い方ではあったが、善戦はするが勝利を呼び込むまでに至らない。J1に戦いの場を移して3年間、どうやればJ1で通用するのかという部分で壁にぶち当たっては、対戦相手をち密に分析し、戦術面の変化や選手起用を変更して試行錯誤を繰り返した。今季は特に、片野坂監督は「大胆にプレーすること」を求めたが、「自分の要求や選手の力を引き出すアプローチが足りなかった。自分の力不足だった」と肩を落とした。

「チームの約束事を守る意識が強く、リスクを冒してまで危険なエリアに入ったり、パスを入れることを恐れていたのかもしれない。そこは選手の判断の部分だが、安全なプレーを選択することが多かった」(町田也真人)。

 

チームを6年率いた片野坂知宏監督

 

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