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グッドルーザー 野球 津久見 1対9を貫いた結束力 【大分県】

グッドルーザー 野球 津久見 1対9を貫いた結束力 【大分県】

第108回全国高校野球選手権大分大会
7月25日 別大興産スタジアム
決勝
津久見 100 000 010|2
大分商 200 100 30×|6

 勝者がいれば、必ず敗者がいる。だが、涙の数だけ強くなれるのもまた真実だ。悔しさを胸に後輩へ、次の自分へとバトンを渡す。勝利だけでは語れない青春が、そこにある。敗者という名の強者たち。“グッドルーザー”の言葉に耳を傾ける。

 夏の挑戦が終わっても、津久見の選手たちはうつむかなかった。歓喜に沸く大分商業を前に、静かに整列したキャプテンの黒木伶(3年)の表情には、大きな悔しさの中にも、やり切った充実感がにじんでいた。「最後の瞬間まで笑顔を忘れずに戦えた。最後まで自分たちの野球をやり切れたので悔いはない」。

 6―2で敗れ、1988年以来、38年ぶりの夏の甲子園出場は、あと一歩で届かなかった。ただ、決勝でも津久見らしさは最初から表れていた。初回、倉員涼太(2年)、黒木の連打などで2死満塁の好機をつくり、比嘉恭之輔(同)が四球を選んで先制。しかし、その後は大分商業の投手陣を攻略し切れず、直後に逆転を許した。

最後まで諦めずにチームを勇気づけた黒木

 六回には相手エースの制球が乱れ、2死満塁と一打同点、逆転の場面を迎えたが、あと一本が出ない。準決勝まで幾度も見せてきた粘りは、この日は最後まで届かなかった。それでも八回だった。先頭の黒木が四球を選び、迷いなく二盗を決める。2死から相手失策の間に一気に本塁へ生還。点差があっても一つでも次の塁を狙う姿勢を貫いた。その姿は最後まで諦めない津久見そのものだった。

 この夏、黒木は何度も試合の流れを引き寄せてきた。準々決勝では初回に先制2ラン。準決勝でも一回に先制適時打を放ち、チームに勢いを与えた。打撃だけではない。3年生になると、自ら志願して中堅手から捕手へ転向。試合中は絶えず守備位置を細かく指示し、投手陣を落ち着かせ、仲間へ声を掛け続けた。

 そのリーダーシップの根底にあったのが、津久見が大切にしてきた「結束力」である。「野球は本来、ピッチャーとバッターの1対1の勝負。でも僕たちは1対9で相手投手を攻略することを大事にしている」。決勝前に黒木はそう語っていた。監督から繰り返し伝えられてきた言葉がある。「1対1ではなく、1対9、(番地メンバーを含む)1対20で戦え」。

 打席に立つ一人だけではなく、全員で相手投手を攻略する。速球派か変化球主体か、狙う球種や配球を共有し、守備でも配球に合わせて野手全員が動く。一人の力ではなく、チーム全員の知恵と準備で勝負する。それが津久見の野球だった。

全員野球で準優勝となった津久見

 決勝の相手は、県内屈指の右腕・平田玲翔を擁する大分商業だった。それでも黒木は「すごい投手だが同じ高校生。相手を上に見ないことが大事」と特別視することはなかった。能力ではなく、全員で戦う野球を最後まで信じ抜いた。

 捕手としても冷静さを失わなかった。投手交代が必要になる場面も事前に想定し、「試合は思い通りにいかないことが前提」と準備を怠らなかった。自身も焦ることはあるという。それでも「キャッチャーが焦ればピッチャーも焦る」と言い聞かせ、誰よりも先に平常心を取り戻し、仲間へ声を掛け続けた。

 甲子園への扉は開かなかった。しかし、この夏の津久見は最後まで「1対9」の野球を貫き通した。黒木が体現した結束力は、勝敗だけでは測れない価値として後輩たちへ受け継がれていく。敗戦の先に残ったのは、38年ぶりの夢へ本気で挑み続けた古豪の誇りだった。 (柚野真也)