#スポーツのチカラ 県高校総体  ハンドボール女子 日本一から3年後、チームメートからライバルに

2020/08/27
  • 高校総体

 春、夏の全国中学大会を連覇してから3年の月日が流れた―。高校最後の年、かつてのチームメートがライバルとなり対戦した県高校総体ハンドボール女子の決勝戦。原川中学で春の全国中学生選手権、全国中学校体育大会で日本一になったメンバー7人は、大分に3人、大分鶴崎に4人と分かれた。県高校総体ではチームの主軸となって対戦した。中学時代の恩師である甲斐万起子監督が見守る中、高校3年間で成長した姿を発揮。試合は延長、再延長ともつれ、最後はサッカーのP K戦のような7mスローコンテストで勝敗を決し、大分に軍配が挙がった。

 

 大分のキャプテンであり、G Kとして最後尾からチームを統率した幡東妃美希は、「お互いの特徴を知っているので、やりにくい部分もあったけど楽しめる部分もあった。G Kとしてシュートを受けることが多かったが、互いの3年間の成長を感じた」と振り返る。両チーム最多の8得点の大分鶴崎のキャプテン石川空は、「7人でコートに立てるのが最後だったので嬉しかった。お互い、どちらに転んでもおかしくない試合だった」と持てる力を出し切った。

 

 決勝前日、会場にいた甲斐監督に「あれ、女の子してるね」と声を掛けられた大分鶴崎の岩本里菜と安東里紗は、その日に長く伸びた髪をバッサリ切った。恩師の遠回しの激励に中学生の頃の勝負に対する情熱を思い出したという。「中学の頃は試合前に気合を入れるために髪を短くしていた」(岩本)。切り落とした髪とともに雑念も迷いもなくなった。目の前の試合、ゴールを目指し、多彩な攻撃で相手を翻弄した。「これまでは大分を意識することが多く、うまくいかないことが多かったが自分のプレーに集中することができた」(安東)。

 

 試合後、勝者を称え、敗者となったメンバーに寄り添った甲斐監督は「お疲れさま。あなたたちの高校最後のプレーをこんなに長く見ることができて幸せだった」と労った。7mスローコンテストの4番手となり幡東に止められた石川に対し、「他の人だったら後悔するかもしれないけど、(中学時代からみんなを引っ張った)あんたやったからよかったのよ。胸を張っていいの」と声を掛けると、石川の目から大粒の涙があふれた。

 

 負けた試合は取り戻せない。だから悔しく、涙も出る。怒りや落胆、失望、あらゆる負の向かい風に襲われる。負けず嫌いであればあるほど、その風速は強い。甲斐監督は中学時代に負けなしだった教え子に「負けたから強くなれることもある。人一倍負けず嫌いになってほしい」との思いを伝えたかったのだ。石川は「(日本一になった中学のメンバーと)同じチームで全国を目指すこともできたけど、別れてライバルとして対戦できたから成長できた部分がある。負けたのは悔しいけど」と次のカテゴリーでの成長の糧とする。そして、石川には夢がある。「それぞれまた違う道を進むけど、いつか大分に帰ってきて国体の選手として試合をしたい。次はチームメイトとして」と原川中のメンバーとの再結成を思い描く。

 

負けから学ぶこともある

 

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