
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
まれに見る大熱戦だった。県高校総体の女子ハンドボール決勝は前後半60分で決着が付かず、延長、再延長となり、最後は7mスローコンテストまでもつれた。大分が20-19で大分鶴崎に競り勝ち、6年連続8回目の栄冠に輝いた。
新チームになってから両校の対戦成績は1勝1敗と五分。3年生の主力に原川中学校で全国大会優勝を経験した選手が大分に3人、鶴崎に4人と分散したことで実力が拮抗していた。大分の守護神・幡東妃美希(3年)は「試合になれば敵。負けるわけにはいかない」と宣戦布告し、鶴崎の得点源・石川空(3年)は「最後に勝つのは私たち」と応戦。両キャプテンから試合に懸ける強い思いを感じた。
試合は序盤からシーソーゲーム。幡東を中心とした堅守の大分に対し、鶴崎は石川を軸に多彩な攻撃で隙を突く。互いの持ち味が発揮されていたが、大分の選手の動きが重かった。幡東が「優勝しなければいけない気持ちが強すぎた」と指摘したように、これまでの先輩が築いた5年連続の優勝が重くのしかかった。大会前にレギュラーの座をつかんだ下川夏穂(3年)は、「プレッシャーに押しつぶされ、やるべきことができなかった」と悔やむ。それでもロースコアに持ち込み、得点を引き離されなかったことは底力がある証拠だ。
好セーブでチームの危機を救った幡東妃美希
調子の上がらない3年生を支えた後藤真子や山口映ら2年生は今大会で大きな成長を見せことは収穫だ。幡東は好セーブを連発、7mスローコンテストでは2本止め意地を見せた。大分は激戦を制したが滝元泰昭監督は「向かう気持ちがなかった。3年生の覚悟を見たかったのだが残念」と、厳しい評価を下したのは3年生への期待が大きかった故の言葉である。
全国高校選抜大会の出場が決まっていたが中止となり、全国高校総合体育大会(インターハイ)も中止となったが、3年間の集大成の場として3年生には花道を用意している。8月下旬に全国選抜大会に出場が決まっていた数校と独自の大会を開催し、9月末に社会人チームなどが参加する日本選手権九州予選を考えている。滝元監督は「次のカテゴリーでハンドボールを続ける選手がいる。上でプレーするのなら、どんな状況でも力を出せなければ通用しない」と反骨心をあおる。
10年間勝ち続けて伝統校。大分が紡ぐ伝統は折り返したばかり。滝元監督は「3年生は下級生の見本となる背中を見せてほしい」と呼び掛けた。唇を噛み締める3年生は静かに闘志を燃やし、初秋のエンディングに向けて動き出す。
大分にとって優勝は通過点に過ぎない
(柚野真也)
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