
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
明るく笑顔が絶えないムードメーカーは「後悔はない」と言い切った。県高校総体テニス競技の女子シングルスで準優勝した台百華(福徳学院3年)は、今大会を最後に競技生活にピリオドを打つ。チーム唯一の3年生であり、キャプテンとして弱音を吐くことなく、気丈に振る舞った1年間だった。昨夏の全国高校総合体育大会(インターハイ)を終えて、先輩からバトンを託された。県高校総体では11年連続12回の優勝を誇る強豪校のキャプテンとなったが、部員は後輩ばかり。同級生にしか分からないような悩みもあったが、持ち前の明るさで乗り切った。
今春の全国高校選抜大会出場が決まっていたが中止となり、インターハイ中止の知らせを聞いたときは、さすがに落ち込んだ。台は「全国大会で活躍したい」と、姉の後を追って北九州市の中学校から福徳学院に越境入学した。全国への思いは人一倍強かっただけに落胆は大きかったが、それでも「自分のモチベーションが下がったら後輩たちにも伝わる」と気持ちを切り替えた。甘えん坊だった末っ子は、寮生活で自立心が芽生えたという。「同学年がいなかったから周りに助けられたと思う。年上にかわいがられ、年下からは慕われた」と父・博吉さんは娘の成長に目を細める。もちろんテニスの技術も向上した。曜日崇監督は「もともと守備力のある選手だったが、最近は自分から攻撃を仕掛け、ポイントを取れるようになった。全国でどれだけ力を発揮できるか楽しみだったのだが…」と全国大会が絶たれたことを悔やむ。
力強いストロークショットで応戦する台百華
競技生活の集大成の場となった県高校総体では、左右に振られても粘り強く、正確なストロークで打ち返すスタイルを貫いた。勝ち上がった準々決勝からの3試合は後輩との対戦が続いた。手の内を知り尽くす相手とのラリー戦は長丁場となり、決勝戦では体力の消耗とともに力尽きた。試合後に曜日監督から掛けられた言葉に涙がこぼれた。「全国の舞台に立てなかったが3年間頑張ってくれた。この経験を次の人生に役立ててほしい」
台は次のステージで看護師を目指す。小さい頃に交通事故で大きなけがをしたときに、入院先で優しく看護してくれた「ナースに憧れた」。高校入学時に、テニスをするのは3年間と決めていたからこそ、全力で走り抜けることができた。「思い残すことはない。この先につながるいい経験ができた」。一点の曇りもない、すがすがしい笑顔だった。
曜日崇監督(右)と笑顔でテニスを終えることができた
(柚野真也)
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