TURNING POINT #09 悔し涙を力に何度でも這い上がる(フットサル、四井沙樹・浦安)

2020/03/28
  • ターニングポイント~つきぬけた瞬間~

フットサルIQで勝負

 

 フットサルの基本から個人戦術だけでなく、ボールの蹴り方、身体操作、重心移動など、これまで考えたことがないようなことばかり。「初対面のときから、めちゃくちゃ怒られた」と話すように、厳しい指導に泣きながら帰ることも多かった。元来負けず嫌いな四井だけに、どん底からはい上がるためにがむしゃらにトレーニングに励みながらも、「頭を使ってプレーすること」を叩き込んだ。これまで感覚的にプレーしていたことを言語化し、150㌢の小さな身体でも頭と技術があれば通用する術を学んだ。

 

 小さな積み重ねが花開いたのは在籍3年目。ついにファーストセット(主力組)で試合に出るようになると、技術的な正確性に加え、優れた“フットサルIQ”が評価される。四井が心掛けているのは「時間をうまく使えるように意識してプレーすること」。正しいタイミングで、正しい選手にボールを配給できるようになると、チームで主力となるのに時間は要しなかった。さらに日本代表に選出される選手へと成長した。初めての国際舞台となった「AFC女子フットサル選手権タイ2018」では思うようなプレーができなかったが、収穫も課題も手にして準優勝に貢献した。

 

 次は「日本代表の主力として世界で戦いたい」と新たな目標を抱いた四井。しかし、18年7月に前十字靭帯損傷および左膝半月板損傷を負う。「最初の3カ月は自由に動けず、本当に復帰できるのかどうか焦るばかり。割り切れず、毎日泣いていた」。全治7カ月、懸命なリハビリを経て復帰するも、19年8月に左膝前十字靭帯再断裂で長期離脱。試練を乗り越え、ようやく日の目を見た矢先の出来事だけにショックは大きかった。引退の二文字が頭によぎったが、「フットサルをしたい」との思いが日を追うごとに大きくなり、「悩んでいても仕方ない、今できることを一生懸命やる」と考えるようになった。

 現在、復帰に向けて練習を再開する目処が立った。「けがの怖さはあるけど、もう一度コートに立って元気な姿を見せたい。もちろん日本代表も諦めていない」と復帰のイメージはできている。目の前の壁を懸命に乗り越えようとするその姿は希望に満ちていた。

*写真の一部は本人、バルドラール浦安ラス・ボニータス提供

 

 AFC女子フットサル選手権タイ2018では準優勝に貢献

 

 

(柚野真也) 

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