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3年生、冬物語 vol.3  何度でも挑み続ける(東九州龍谷高校)

3年生、冬物語 vol.3  何度でも挑み続ける(東九州龍谷高校)

 高校3年生にとって最後の公式戦となる冬の全国大会。県代表の誇りを胸に集大成として大一番に臨んだ東九州龍谷の園田風音。小柄なセッターはメッセージを込めてトスを上げ続けた。

 

 高校バレーボールの最高峰となる全日本高校バレーボール選手権大会(春の高校バレー)で、日本一にあと一歩及ばなかった東龍。準決勝の下北沢成徳(東京)戦に続き、決勝でも金蘭会(大阪)相手にフルセットまで持ち込み、互角に戦ったが惜敗した。試合後、タオルで顔を覆い、大粒の涙を流した園田は、「このメンバーで優勝したかった」と悔しさを隠さなかった。

 

 昨年は「アジアジュニア女子選手権大会(U-19)」の日本代表メンバーに選出され、優勝に貢献するだけではなく大会MVPを獲得した。高校屈指のセッターに相原昇監督は、「状況に応じて最も効果的なトスを上げ、試合を組み立てることができる選手。コート上の監督」と最高の賛辞を送る。今大会は2回戦から5試合、フル出場した。変幻自在のトスワークで相手ブロッカーに的を絞らせず、スパイカー陣は気持ちよく打ち込んだ。平山詩嫣(3年)は「レシーブが乱れても園田はブロックを剝がしてくれる」と絶大な信頼を寄せる。

 

チームの司令塔として試合をつくった園田風音

 

 身長160㌢、決して大きくない体に反骨心が詰まっている。高校入学当初から柔らかいタッチのトスとコートを俯瞰(ふかん)できる能力を評価されていたが、1学年上の170㌢を超えるセッターの陰に隠れた存在だった。同級生の平山、合屋咲希、梅津憂理が1年生の頃からコートで活躍する姿をベンチで見る時間が長かった。ただ、ベンチにいた時も絶えず「自分ならどこにトスを上げるのか」を想像し、練習ではイメージを膨らませてトスを上げ続けた。

 

 最後の大会となった春の高校バレーでは、「このメンバーとバレーを楽しみたい。自分たちの最高を出せば勝てる」と仲間への感謝の思いを乗せてトスを上げた。準決勝の下北沢成徳戦では最終第5セットも競り合いとなった。先にセットポイントを奪ったが、そこから2連続得点を許し14-13。勢いは完全に相手に移ったが、「最後は平山。キャプテンであり、エースである平山が決めなければ意味がない。どんな体勢でも(トスを)上げようと決めていた」。相手のブロックに2度続けて阻まれていたが、3度目のトスも平山に上げ試合を決めた。

 

 精密機械のようなトスワークの裏には、涙もろく、義理人情にあふれた人間味がある。決勝の舞台に立ち、そして夢破れた時、相手選手が喜びを爆発させる表彰式をまともに見ることができなかった。ただ、「みんながここまで連れてきてくれた」と、うなだれるチームメイトを抱擁した。なにしろ責任感の強い選手だ。選手はもちろん、応援してくれた人たちも悔しい思いをした。そんな人たちの思いを胸に、次のステージでも頂点を目指すのだろう。指先まで届いていたものを手に入れるために。

 

Vリーグでの活躍が期待される

 

3年生、冬物語 

vol.1 不遇の時代を過ごした3年生が礎を築く(別府溝部学園高校)

vol.2 まだみんなとバスケがしたい(中津北高校)

 

(柚野真也)