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大分トリニータ 清武弘嗣が求めるゴール前のひらめき 【大分県】

大分トリニータ 清武弘嗣が求めるゴール前のひらめき 【大分県】

 敗戦直後とは思えないほど清武弘嗣の言葉は冷静だった。大分トリニータは2026-27シーズンの開幕戦で湘南に0―1で敗れた。前半終了間際にセットプレーから失点。後半は攻勢を強め、相手を上回る7本のシュートを放ったが、最後まで1点が遠かった。

 それでも清武は必要以上に結果を引きずらない。「まだ始まったばかりだし、そんなにネガティブには捉えていない」。長いシーズンを何度も経験してきたベテランらしい視点である。さらに、この試合の収穫を問われると、少し笑いながら言い切った。「負けたので収穫はない」

 潔い。ただ、それは敗戦によって積み上げたものまで否定するという意味ではない。勝っても浮かれず、負けても必要以上に沈まない。「今日負けたからといって何かが大きく変わるわけではない」。目の前の一試合に感情を振り回されず、最終的に1位から6位に入る。そのために何を積み重ねるべきかを考えている。

開幕戦は途中出場だったが流れを一気に変えた

 そんな清武が開幕戦で感じた最大の課題がゴール前での「崩し」である。後半29分から投入されると、清武はボールを引き出しながら攻撃に変化を加えた。フォーメーション変更によって立ち位置が変わり、湘南の守備に迷いが生まれる。大分が押し込む時間は増えた。しかし、ゴールには届かなかった。

 「結局、崩し切れていない」。ボールを持つことと相手を仕留めることは違う。パスをつなぎ、敵陣まで運べても最後の一線を越えなければ得点にはならない。百年構想リーグから続く課題だ。では何が必要なのか。清武が求めるのは決められた形を繰り返すことだけではない。チームとして攻撃を整理した先に、選手一人一人の「イメージ」や「ひらめき」が必要だという。「無難にやっていても点は取れない。どこかで誰かが思い切ってチャレンジすることも必要になる」

 この言葉に清武のサッカー観が凝縮されている。ゴール前では正解を探している時間などない。相手の逆を取るパス、意表を突くシュート、わずかなスペースへの飛び出し。時には失敗を恐れず、予定調和を壊すプレーが必要になる。経験を重ねた清武が求めているのは自分だけが自由にプレーすることではない。それぞれが描いたイメージを周囲と共有し、チームの武器へ変えていくことだ。

「得点には大胆なチャレンジが必要」と語った清武

 その可能性を広げる存在も加わった。195センチの相沢デイビッドは高さだけでなく、足元の技術も備える。「ああ見えて足元も器用なんだ」と清武は笑う。ヘディングだけでなく、コンビネーションでも生かせる大型FWとの関係が深まれば、大分の攻撃には新たな選択肢が生まれる。

 開幕戦は0得点で終わった。だからこそ課題から目をそらさない。ただ、一敗ですべてを否定することもしない。目の前の結果に振り回されず、必要なものを見極めて次へ進む。その姿勢に、数多くの舞台を経験してきた清武らしさがある。そしてゴール前では、経験に頼って安全策を選ぶのではなく、むしろ「無難」を捨てる勇気を求める。失敗を恐れず、それぞれが持つイメージやひらめきをプレーで表現する。それを仲間と共有できたとき、大分の攻撃はもう一段階先へ進む。

 開幕戦では生まれなかったゴール。その一本を引き寄せるのは決められた形だけではない。清武が求める大胆なチャレンジがチームに広がったとき、大分の攻撃にも新たな可能性が見えてくるはずだ。 (柚野真也)


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