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全国高校選抜大会 アーチェリー男子 考えて射つ力全国8位の真価 立道諒(大分東明2年) 【大分県】

全国高校選抜大会 アーチェリー男子 考えて射つ力全国8位の真価 立道諒(大分東明2年) 【大分県】

 70メートル先の標的に向けて矢を放つ。わずかな力のずれ、呼吸の乱れ、心の揺らぎが、そのまま点数になる。アーチェリーとは、静けさの中で再現性を競う競技である。その世界で、大分東明の立道諒(2年)は高校から競技を始め、わずか1年足らずで全国高校選抜大会8位入賞という結果を残した。偶然の快進撃ではない。そこには冷静さと探究心、そして練習を積み重ねる地道な思考があった。

 立道は小学校では水泳や野球、中学ではバレーボールにも親しんだ。運動神経には恵まれていたが、アーチェリーと出合ったのは高校入学後である。部活動紹介の中で最もしっくりきたのがアーチェリーだった。体験で弓(ボウ)を握り、面白さに引き込まれた。ただ、始めた当初から際立っていたわけではない。標的には当たっても、うまく射ている実感はなかったという。

 それでも立道は、早い段階から競技の本質に近づいていった。アーチェリーは的を射る技術だけで勝てるほど単純ではない。毎回同じ動きで、同じ力を矢に伝えることが求められる。立道はその難しさを理解し、感覚を曖昧なままにしなかった。引き切った瞬間に「カチッ」と音が鳴るクリッカーを一つの基準にし、そのタイミングで状態を把握する。調子が良ければ2、3秒で切れ、9点、10点に近づく。悪ければ4、5秒かかる。そのわずかな差を見逃さず、自分の射を言語化していく姿勢が立道の強みである。

再現性を追求する立道

 象徴的なのが練習日誌だ。部内でも際立って内容が濃いというノートには、その日の練習の流れだけではなく、何を感じ、どこに違和感があり、なぜ外れたのかまで細かく記される。「いい射をしたつもりだったのに6点に行った」「リリースが膨らんだから外れた」。感覚のままで終わらせず、言葉にして蓄積していく。調子が落ちた時には、状態の良かった日の記述を見返し、自分を立て直す。思考の跡を残すことが、そのまま競技力につながった。

 全国高校選抜も、そうした積み重ねの先にあった。立道自身、当初から全国を現実的な目標として見ていたわけではない。全国選抜メンバーを決める試合で、周囲の不調も重なり代表の座をつかんだ。「運が良かった」と語るあたりに立道の謙虚さがにじむ。ただ、運だけで全国8位には届かない。大会前の記録会で72射600点を突破し、「本番で緊張しても580点は打てる」という計算を持って会場に入った。予選では595点を記録し、決勝ラウンドでも1回戦6―2、2回戦6―0、3回戦6―2と勝ち上がった。しかも大会2日前まで38度の熱があったというから驚かされる。体調不安を抱えながらも感覚を崩さず、練習通りに射ち切ったことに再現性の高さが表れている。

「段階を踏み、3年時に日本一を狙う」と宣言

 立道は常に落ち着いている。良い意味で周りに流されず、自分を客観視できる。だからこそ「優勝してやろう」と気負うのではなく、「挑戦者として試合を楽しもう」と考えた。空回りを避け、平常心で臨むための選択である。1射ごとに間を取るルーティンも、その冷静さを支える工夫の一つだ。調子が良いときほど早く射ちたくなる。だが、そこで焦れば崩れると知っている。勢いに任せず、心身を整えてから射つ。その判断ができる高校2年生は多くない。

 全国8位は到達点ではない。立道はすでに次の基準を見据えている。全国で5位以内に入ること。そのために72射で620〜630点を安定して出すこと。さらにその先には、全国高校総体や国スポでの優勝がある。「一発屋で終わりたくない」という言葉は強い。必要なのは「圧倒的な練習量と、1射1射を雑にしないこと」と本人は言う。

 静かな競技である。だが、その内側では誰よりも深く考え、誰よりも丁寧に自分と向き合う戦いが続いている。立道の武器は、積み重ねを信じ切る知性と冷静さである。この春の8位入賞は、無名の挑戦者が残した一度きりの結果では決してない。


(柚野真也)

大会結果