県スポーツ少年団駅伝交流大会 男子 豊後高田陸上クラブが連覇達成 【大分県】
陸上競技
コロナ禍の高校3年生たち② 駅伝 平松彩華(大分西) 責務を果たし、後輩にタスキをつなぐ
新型コロナウイルスの感染拡大で次々と大会が中止となった2020年。県や、それぞれの競技独自の大会で練習の成果を発揮できた者もいれば、不完全燃焼のまま競技を辞めた者もいる。多くの高校3年生にとって想定外だった1年間を振り返り、今後はどのような道を歩むのか、「コロナ禍の高校3年生たち」と題してそれぞれのドラマをひもといた。
高校3年間、並走する同級生はいなかった。それでも大分西の平松彩華(3年)は「充実した3年間だった」と振り返る。高校最後の大会であり、競技生活の終わりと決めた全国高校駅伝競争大会県予選は、「1年の時は先輩が可愛がってくれて、2年になると先輩と後輩がいて、3年になってからは悩むこともあったけど、いつも後輩がそばにいてくれた」と感謝を胸にラストラン。2位でタスキを受け、アンカーとなる第5区(5㌔)で順位を下げることなく、ゴールで待ち構える後輩に向かってテープを切った。
本来であれば九州大会の出場権を手にするはずだったが、新型コロナウイルスの影響で中止。「正直、大会がなくなって悔しかったけど、県予選があって良かった」と持てる全ての力を出し切った。「1、2年生の勢いがすごくて、少しでもいい姿を見せたかった。練習の時は前を走る後輩に少しでも差を縮めたいと思って走ってきた。今日は苦しかったけど後輩の応援が力になったし、笑顔で迎えてくれてうれしかった。これで終わるという実感はないけど、これから出てくるのかな」。つながれたタスキの重さを知るからこそ、最終走者の責務を果たし、ほっとする気持ちの方が大きかった。区間2位の18分41秒が最後の記録として刻まれた。
「少しでもいい姿を見せたかった」と力走した平松彩華
今年の春先からの8カ月間、多くの大会が中止となり、不安を抱えながらの練習だった。最後の舞台として今大会に照準を合わせて調整してきた。宮川剛監督は「これまでの2年間はずっと2位で悔しい思いをしてきた。だからこそ最後は、との思いは誰よりも強かったが、この状況下で気持ちが何度も切れかけ、今大会まで持つかなと思った」と励ましながら見守った。頑張り屋の平松がゴールする瞬間を見たときは胸が熱くなった。「平松がいないとチーム全体に不安が募るほど、存在感があった。ゴールに飛び込んでくれた時はうれしかった。今までチームを引っ張ってきてくれてありがとうと言いたい」
平松を慕う奥西つばさ(2年)も同じ思いだった。「出走メンバー争いが激しいときも、優しくチームをまとめてくれた。今日も走る前に一緒にタスキをつなごうと言ってくれた」。ゴールした平松に「3年間お疲れさまでした」と伝えた。
ゴール後に呼吸を整え、3年間を振り返った平松に、後輩への思いを聞くと彼女は小さく微笑んだ。「1、2年生はみんな速い。互いに鍛え合って来年こそ(6連覇した)大分東明より先にゴールしてほしい。それは分かっていると思う」。県内で過去最多の優勝を誇る大分西のタスキを後輩につないだ。
最後はゴールで待つ後輩に迎えられた
(柚野真也)