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大分トリニータ 戸根一誓 最終ラインの反逆者 【大分県】

大分トリニータ 戸根一誓 最終ラインの反逆者 【大分県】

 3試合無失点で滑り出した守備が、熊本戦で崩れた。背後を取られ、セカンドボールを拾われ、3失点。大分トリニータにとって今季初黒星は、積み上げの裏側に潜んでいた課題を突きつける一戦となった。昨季のように横パスとバックパスが増え、前進の矢印が鈍る。重たい空気が漂うなか、それでも最終ラインから何度も縦へパスを差し込んだ男がいる。戸根一誓である。

 魂のこもった対人守備と空中戦の強さで最終ラインに迫力をもたらすDF。昨季は限られた出場機会ながら11試合2得点と結果も残した。だが本人は守備の職人にとどまるつもりはない。「点を取りたいんで」。その言葉こそが、戸根の現在を雄弁に物語っている。

 今季について問うと、「昨年よりやることがはっきりしている。特に攻撃」と語る。練習の段階から監督の意図が明確に落とし込まれ、ボールが入った瞬間の動き出しが速くなったという。「その場しのぎじゃない」。選択肢が整理されているからこそ、迷いなく前へ出られるのだ。

常にリスク管理しながら得点をイメージする

 スリーバックの一角という役割に縛られない。「相手が嫌なところに立つ」。その発想が戸根の基準である。高い位置へ顔を出すのも、突如中盤でパスを受けるのも、すべては相手を混沌に落とし込むため。意外性は思いつきではない。最終ラインにいる自分だからこそ生み出せる「ズレ」だと理解している。

 縦パスの先には清武弘嗣がいる。「あそこに入れたら何かが起きる」。世界基準を知る大分のレジェンドを信じ、果敢にくさびを打ち込む。後方からの一刺しが、停滞を破る起点になると知っているからだ。

 もちろん定位置は約束されていない。昨季途中から加入した三竿雄斗や岡本拓也というベテラン実力者が並ぶ。「最初は(ポジションがなくなるから)入ってくんなよと思った」と笑うが、すぐに「盗めるものが多い」と続ける。ライバルを糧に変える柔軟さもまた、戸根の強みである。

後方から攻撃を組み立てる戸根

 「誰かが何かを捨てないといけない」。リスクを取る者がいなければ、停滞は破れない。自らが行くべきと判断すれば迷わず前へ出る。一方で、行かない勇気も持つ。その選択の積み重ねが、攻守のバランスを形づくる。

 3失点の敗戦は痛い。しかし戸根は「対戦相手より自分たち」と言い切る。今季は自分たちが積み上げてきたものを出すことに集中しているという。完成度はまだ途上だ。それでも「今でもやれる」と手応えはある。

 守備の中心としてチームを引き締め、攻撃の組み立てで流れを生み、ゴール前に飛び込む。最終ラインから湧き上がる攻撃の衝動は、敗戦の後も消えていない。戸根のサッカー観は明快だ。相手が嫌がる場所に立ち、流れを変える一手を打つ。その積み重ねが、チームを前進させていく。


(柚野真也)

大会結果