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コロナ禍の高校3年生たち①  陸上男子 佐藤主理(藤蔭) 監督との約束を果たしたラストラン

コロナ禍の高校3年生たち①  陸上男子 佐藤主理(藤蔭) 監督との約束を果たしたラストラン

 新型コロナウイルスの感染拡大で次々と大会が中止となった2020年。県や、それぞれの競技独自の大会で練習の成果を発揮できた者もいれば、不完全燃焼のまま競技を辞めた者もいる。多くの高校3年生にとって想定外だった1年間を振り返り、今後はどのような道を歩むのか、「コロナ禍の高校3年生たち」と題してそれぞれのドラマをひもといた。

 

 全国高校駅伝競争大会の県予選が高校最後の公式戦となった藤蔭の佐藤主理(3年)。第2区(3㌔)を区間3位で走り、チームとしては3位に入賞した。「すごく楽しかった。最後の大会なので笑って終えたかった」と終始笑顔だった。

 

 中学ではバスケットボール部に所属していた佐藤は、3年時に玖珠郡の中体連駅伝大会に参加し、河津卓哉監督と出会った。「力感のないフォームがいい。君には伸びしろがある」と河津監督の誘いを受け、藤蔭高校に入学した。当初は駅伝に必要なスピードをつけるために中距離を走っていたが、記録会に出場するたびにベスト記録を更新した。佐藤は駅伝を走ることより、800㍍で勝負したいと心変わりした。「駅伝に出るためにこの学校に来たのに、監督は僕の思いを尊重してくれた」。ためらいはあったが河津監督が背中を押してくれた。

 

 そこから佐藤と河津監督の二人三脚が始まる。中距離は専門外である河津監督は、佐藤の記録を伸ばすため、練習メニューから技術指導できるようにコーチングを学ぶ。「監督は僕のためにすごく勉強してくれたんだと思う」と佐藤。職員室の机に山積みされた専門書を見て、一緒に戦ってくれる監督に恩返しがしたいと誓った。また、「現状維持は後退」との監督の言葉を意識して、自分から率先して練習に取り組むようになる。

 

2区を走りきった佐藤主理

 

 「長い距離を走っている選手だったので(800㍍走の)ラストスパートは力強いものがあった。ここを伸ばせば全国でも通用する」(河津監督)。記録は伸び続け、全国での表彰台が現実味を帯びてきた矢先に、新型コロナウイルス感染拡大により次々と大会が中止となる。多くの選手が先の見えない状況に不安を覚えたが、「意識を高く保ち、休校期間も練習していた。筋力もタイムも落ちなかった」と河津監督。「もしかしたら、この先の大会は何もないかもしれない」と頭をよぎることもあったが、佐藤は自己記録更新を目標に走る。10月に開催された全国高校陸上競技大会は天から褒美が与えられたかのようだった。男子800㍍の県高校新記録となる1分50秒24で予選を突破し、決勝でも力走して準優勝。「あきらめずに目標に向かうのが重要だと思っていた。努力が報われた」と佐藤。

 

 大会後は休むことなく駅伝に向けての練習に切り替えた。「監督と駅伝を走ることは入学した時からの約束だったから」と高校ラストランを駅伝で終えた。「充実した3年間を過ごせた。大学でも大好きな陸上を続けたい」と大学進学後は中距離を専門に、記録更新を狙う。

大学でも自己記録更新を目標にする

 

 

(柚野真也)

大会結果