完成形に到達できぬまま敗戦 大分・山月雄翔
- 高校野球
第100回全国高校野球選手権記念大分大会
7月11日 第1試合 別大興産スタジアム
大分舞鶴 200 000 200|4
大 分 101 100 000|3
今大会の登録選手で最も長身の大分の山月雄翔(3年)。187cmの左投げとなれば否が応にも周囲の期待は高まる。「あの手足の長さはどんなに練習しても得ることはできない。どこかで覚醒してくれると思い投げさせた」と松尾篤監督も滞在能力の高さにほれ、手塩にかけて育てたエースに大事な大会初戦を託した。
しかし、期待の大型左腕は立ち上がりから課題だった制球が定まらなかった。ボールが先行し、ランナーを背負う場面が続く。それでも大崩れすることなく投げ続けたのは成長の証だ。入学当初から頭一つ大きかった逸材にほれたのは広瀬茂部長も同じだった。「体のバランスが悪く、リリースポイントも定まらなかった。本人は体の使い方が分からず悩んでいたので、まずは下半身で投げるイメージをつくり上げた」と当時を振り返る。3年間、二人三脚で歩み、体重を後ろに残し、左肩と肘が水平になる位置を“ゼロポイント”と名付け、そこから腕をムチのようにしならせる理想のフォームを目指した。
筋は良かったのだろうが、楽な道のりではなかった。肩の可動域などは個人差が大きく、自分の体に合った投法にするまで時間が掛かる。その過程で肩を痛めたこともあった。試行錯誤は続き、「自分が納得できるまで投げた」と大会直前まで捕手を座らせ、2時間近く投げ込む日もあったが、納得できる投球はできないままだった。期待してくれた監督、部長に完成形を見せたかったが、3年間の高校野球を終えることになった。ただ、この未完の大器には先がある。広瀬部長は「高校で花を咲かせることはできなかったが、この努力は無駄ではなかったと言える日が来るはず」とエールを送る。
8回9安打、4失点。山月の高校最後の公式記録だ。先発投手として試合をつくり、決して悪い成績ではない。「負けは負け。期待して使ってくれた監督、部長を甲子園に連れて行きたかった。自分が情けない」と厳しい言葉を並べた山月は、次のステージに目を向けた。
大型左腕として注目が集まった山月雄翔
(柚野真也)