3年生、夏物語2023 野球 エースの責務を背負い続けた児玉迅(大分商業3年) 【大分県】

2023/08/01
  • 高校野球

 児玉には理想とする投球がある。投手は、打者に対し、遅い球をいかに速く、ボール球をいかにストライクにみせるかが勝負の鍵となる。キレのある投手とは「錯覚を起こさせる投手」という。錯覚は持ち球の多さ、制球力、腕の振りなど、いくつもの要素が重なって生まれる。児玉はこれまで投げなかったカットボールを加えた。さらに、投球で最も大事にしているという「ボールが伸びる」感じを生むために回転量を増やした。肩を大きく回し、遠心力が最大になるポイントまで持ってボールを切るように投げることで、打者の手元で伸びるようになった。

 

 最高の状態で迎えた今大会は、準決勝まで自責点0で試合をつくった。ただ、準決勝から「足が重くて下半身が使えず、手投げになった」(児玉)。見えない緊張と疲労の蓄積が顕著に出たのが決勝戦だった。初回は三者凡退で切り抜けたが、2回に3失点し、直後の打席で代打を送られた。ベンチに戻ってからは後続の投手に声をかけ、ピンチの場面では伝令としてマウンドに向かい、仲間を励ました。勝利を信じていたが、願いは届かず高校野球を終えた。「申し訳ないピッチングをしてしまった」とエースとしての責務を果たせなかったことを悔やんだが、「今まで積み上げたことは出せた。後悔はない」と言い切り、球場を後にした。

最高の仲間と3年間を過ごした

 

 

(柚野真也)

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