準決勝の明豊戦は、大商のベストゲームだった。春のセンバツでベスト４に進出した強豪に奇襲がハマった。今大会一度もマウンドに上がっていない田中誓哉（３年）が先発した。「本人もまさか準決勝、しかも明豊に投げるとは思っていなかったと思う」と渡辺正雄監督。本職は外野手だが、左腕のワンポイントとして準備はさせていた。縦カーブが面白いように決まり、明豊打線を見事に封じた。打っては三回に三代崇貴（３年）の３点本塁打が飛び出し、明豊の出鼻をくじき、最後まで翻弄した。

　明豊戦に全てを出し尽くしたわけではないが、６年ぶりの決勝戦ではあっさりと藤蔭に勝利を譲った詰めの甘さは否めない。だが、応援するものを引きつける面白さがこのチームにはある。負けたら何にもならないという人もいるだろうが、ガチガチに勝負に凝り固まり、合理性のみで動く野球より、面白かった。

中軸を担った三代崇貴

（柚野真也）