TURNING POINT #010 一撃必殺の蹴りで頂点を目指す(テコンドー、長野聖子・J:COM大分ケーブルテレコム)

2020/04/22
  • ターニングポイント~つきぬけた瞬間~

競技人生を変えた師との出会い

 

 1年の空白はあったが、「自分にはテコンドーしかない」と帰国後に競技に復帰する。時同じくして現在の師に出会う。タイ代表のコーチの経歴を持つ金載祐(キム・ジェウ)さんに指導を仰ぎ、これまでと異なる感覚をつかんだ。「自分が一番強いと思いなさい」、「もっと強くなれる」。金コーチの前向きな言葉に気持ちが奮い立ち、細かい一つひとつの動作にキレと力はみなぎった。選手にとって良き指導者との出会いは人生を変える。復帰から3カ月後の全日本選手権で初優勝し、翌年に連覇を遂げると日本トップクラスに名乗り出た。

 

 金コーチから戦略と駆け引きを学び、理論的に試合を進めることができるようになると、戦いの場を世界に移しても通用した。2018年のアジア選手権大会3位を皮切りに、世界各国のオープン大会で武者修行して力をつけた。東京五輪出場への期待は高まったが、五輪には長野が本来の階級とする53㌔級がないため49㌔級で勝負しなければならない。今年2月にあった東京五輪日本代表選考会では、直前の練習で肋骨を骨折して思うように練習ができず、きつい減量も重なり「本調子にもっていけなかった」(長野)。初戦で敗れ、大きな目標を失った。

 

 4年に一度の五輪はアスリートにとって“夢舞台”だ。夢破れた者にとって、ポッカリと開いた穴を埋める作業はたやすくない。傷心した傷が癒えぬまま長野は地元・中津で開催される全日本選手権の出場が決まっていた。東京五輪日本代表選考会が終わって2日後から練習を再開したが気持ちが入らない。それでも気持ちを奮い立たせた。「周りの応援が力になった」と大声援を背にコートに立ち、見事頂点に立った。成長の余白を残す24歳は、「安定した勝てる選手になりたい。そのためには、体力をつけ、しっかりポイントを取れる技術も磨きたい。まずは来年の全日本での連覇が目標」と明確な目標を見据えた。静寂を切り裂くような一撃必殺の蹴りで、観客を魅了するつもりだ。

 

全日本選手権で連覇を目指す

 

 

(柚野真也)

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