
県高校総体 バレーボール男子 仲間との絆で栄冠をつかんだ大分南 【大分県】
バレー
小さな巨人―。そう表しても決して大げさではない。全日本バレーボール高校選手権大会(春の高校バレー)で注目を集めた東九州龍谷(東龍)の室岡莉乃である。1年生ながら東龍のエースとして堂々とセンターコートに立ち、優勝候補の金蘭会(大阪)や下北沢成徳(東京)を相手に次々とスパイクを決めた。高さが最大の武器となるバレーボールにおいて身長162㌢は小柄と言わざるを得ない。しかし、それを補う身体能力が彼女にはある。ジャンプし、手を伸ばした最高到達点が297㌢に達する。女子バレーボールでは最高到達点300㌢が1つの基準となるが、春の高校バレーで注目された西川有喜(金蘭会3年)は身長180㌢で最高到達点300㌢、石川真佑(下北沢成徳3年)は174㌢で299㌢。比較すれば、室岡の身体能力の高さが分かる。
中学の頃から全国的にも有名で、上毛中学校(福岡)の時に全日本中学校バレーボール選手権で3位、福岡県選抜として全国都道府県対抗中学バレーボール大会で3位となり、東龍に入学した。入学動機は同じ中学出身の合屋咲希(3年)、池島綸(3年)らの先輩がいたこと、東龍の高速コンビバレーが自分に合っていたことなどが挙げられるが、一番の理由は「通い慣れた中学から近かったこと」というあたりが室岡らしい。「私生活は謎、ほわんとしてマイペース」(合屋)、「何があっても動じない。接しやすいけど、つかみどころがない」(池島)との証言通り、わが道を行くあたり大物感が漂う。
実際に話すとあどけなさの残る高校生なのだが、コートに立てばまばゆい輝きを放つ。「身体能力は飛び抜けている。体幹が強く、空中で相手のブロックを見た上で打てる。そこから繰り出すパンチ力は高校生のものではない」と相原昇監督は絶賛する。「男子のような強烈なインナースパイクを打てる。肩が柔らかくないと体に負担がかかる。空中で体を回す遠心力など、細かいところまで考えてプレーしていると思う」とはバサジィ大分女子バレー部の徳丸善基監督。多くの目利きのバレーボール関係者が舌を巻く身体能力と高度な技術を持つ。
驚異のジャンプ力で注目を集めた室岡莉乃
際立った運動神経と技術を発揮するのはスパイクだけではない。地をはうような姿勢から果敢なレシーブをする。「少しでも長く試合に出たい。練習からしっかり自分のプレーを出せるように考えているだけ」と本人の考えは至ってシンプル。大好きなバレーボールをやっていたい。相手が強ければ燃えるし、格下であろうとも手を抜かない。常に自分の力を100%発揮するのが室岡のバレー哲学だ。
そんな室岡に忘れられない出来事がある。これまでバレーボールを楽しむことが全てだったが、憧れの春の高校バレーの舞台に立ち、あと一歩で日本一を逃した悔しさは忘れられない。勝っても、負けてもあまり表情を変えない室岡だが、春の高校バレー決勝後に初めて涙した。「相手にマークされているのは分かっていた。それに負けないスパイクを打てなかった。先輩たちがつないでくれたボールを決められなかったことが悔しかった」と振り返る。これまでに味わったことのない悔しさを知り、小さなエースは成長を誓った。「全てをレベルアップしたい。パスもして、サーブでもスパイクでも点を取って、バックアタックも積極的に取り入れたい。チームに点がほしいときにセッターが迷わずに私に上げられるような選手になりたい」。それがエースであることなのだ。
春の高校バレーで初めて悔し涙を流した
(柚野真也)
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