OITA SPORTS

7/1 TUE 2025

supported by

中山建材

サッカー サッカー

トリニータ 待望される切り札 難局を打破するジョーカーは誰だ!?

トリニータ 待望される切り札 難局を打破するジョーカーは誰だ!?

 J2リーグ戦が佳境を迎えている。大分トリニータは16勝6分10敗、勝点54で5位。1試合少ない首位の町田との勝点差は6。残り10試合を残し、まだ優勝を狙える位置にいる。

 

 無得点が3試合続き、勝利に見放されていたが、8日の32節熊本戦で勝利し、嫌な流れを断ち切った。片野坂知宏監督は勝てない間も「チャンスはつくれている。これまでと同じように、こだわって自分たちのサッカーをするだけ。特効薬なんてない。練習から積み上げるしかない」と信念を貫いた。これまでやってきたことは間違っていない。周りにああだ、こうだと騒がれることで選手が疑心暗鬼となり、内容が悪くなっているのかもしれないという気持ちになることを恐れ、いつも以上にブレない方針を示し続けた。

 

 夏を迎えてコンディションが落ち、パフォーマンスが低下した現実は確かにある。対戦相手に研究され、持ち味を出せずに勝点が伸びない時期もあった。だが、コンディションが戻り、攻守がかみ合えば、リーグ前半戦のような姿を取り戻すことは可能だ。結果が伴わないとき、試行錯誤する余り本来のスタイルを見失えば、コンディションが回復しても元の姿に戻れなくなってしまう。片野坂監督にとって、最も怖いのはそれであった。だからこそ、初心に帰って、スタイルを貫くことが重要だった。

 

32節熊本戦で4試合ぶりの勝利をおさめた

 

 熊本戦では、これまで先発出場が少なかった清本拓己をフル出場させたり、途中出場の川西翔太をトップ下ではなくボランチで起用したりと、さまざまな手を打った。その末に奪った丸谷拓也の追加点、藤本憲明のだめ押し点は、次節以降へとつながる一撃となったはずだ。

 

 中でも、川西のプレーは特筆に値する。ピッチ全体を俯瞰(ふかん)できており、独特なリズムのドリブルを効果的に使いながら、ボールをキープし、パスを絡めて緩急の変化で得点機をつくる場面が見受けられた。決められたことをやり遂げようとする選手が多い中、自らの判断でプレーしており“やらされているプレー”がないのが特徴だろう。

 

 リーグ戦は残り10試合となった。一人ひとりが自分に与えられた役割を理解し、責任を持って遂行すればJ1自動昇格の2位以内も可能かもしれない。これから最終節まで、いくつかの「正念場」が必ず訪れるだろうが、難局を乗り越えるにはいい意味で予定調和を崩す川西のような存在が必要になってくる。

 「まずはカタさん(片野坂監督)のサッカーをして、チームが勝つために何ができるかを考えたい。その中で自分らしさを出していければいい。自分らしさを出すことが、チームにとっても意味があることだと思う」。淡々とした受け答えにも、自分のプレーに対する確固たる自信が垣間見える。何よりもゴールが求められる“ラスト10”では、彼のその自由な発想とスタイルこそが求められている。

 

残り試合でカギとなる川西翔太(左)

 

(柚野真也)

大会結果