高校球児の憧れの舞台となる甲子園を懸けた「全国高校野球選手権大分大会」が開幕。勝者と敗者を分かつことが酷に思える熱戦が繰り広げられる。３年生にとっては負ければ最後の大会となる。ここでは３年間、競技に打ち込んだ３年生にスポットを当てたい。

　開幕戦で、大会を華やかに彩る第１号本塁打を放った。六回、大分雄城台が2点のリードを追う展開で３番・山月研翔は、「長打を狙っていた。ストレートだったと思う」と、思い切り引っ張った打球はライトスタンドに飛び込んだ。「記憶に残ることができた。とにかくうれしい」と喜んだ。

　ムードメーカーの一撃はチームを勇気づけた。釘宮啓彰監督の「あの１点でベンチの雰囲気が変わった。いけるぞという空気になった」との言葉通り、八回には短打と四球で塁を埋め、池田太晴（２年）の中前二適時打を呼び込んだ。

今大会初本塁打を放った山月研翔

　秋まではリードオフマンだった山月だが、冬場の筋力トレーニングで力強さが加わり、春からは３番が定位置となった。４月に卒業した先輩のバットを使い出した頃から、練習試合で本塁打が出るようになった。「自分に合っていたというのもあるが、見た目がカッコ良かったというのが本音。本当は欲しかったけど期限付きで貸してもらっている」とは苦笑いまじりの打ち明け話。黄金に輝くバットを持ってから「ググーンと調子が良くなった」。今大会では反撃ののろしを上げる価値ある一打を放ったのだから、山月にとって逸品なのだろう。

　勝利の殊勲者となった山月の活躍は、チームにとって大きな追い風だ。釘宮監督は「クリーンアップで最も打率が高く、勝負強い。長打力があり、うまさもある。おとなしい選手が多いチームだが、ムードメーカーの山月が打てば一気に盛り上がる」と話し、次の明豊戦に向けて光明を見いだした。

　山月は今大会で最も対戦したい投手に太田虎次朗（明豊３年）の名を挙げており、「（太田の）しびれるようなストレートを打ち返したい。相手はセンバツ準優勝チームだがひるまず、一泡吹かせたい」と意気込む。高校最後の夏は、始まったばかりだ。山月は“黄金の金棒”とともに頂点を目指す。

次の明豊戦での活躍を誓った

（柚野真也）