明豊高校剣道部 鶴 侑磨(2年) file.894
剣道
NEW!
あと一歩、頂点には届かなかった。全国高校選抜大会の剣道女子団体で、明豊は2年連続の準優勝。だが、この2位には確かな手応えが宿っている。伸び悩んだ世代が、ようやく自分たちの力を全国の舞台で解放した大会だった。
岩本貴光総監督は、この代を「もともと力のある選手が多い」と評価しながらも、「思ったほど伸びてこなかった」と率直に振り返る。入学時から期待された学年だったが、上級生の壁や試合経験の不足もあり、例年のような急成長を示せずにいた。昨年11月の県高校新人大会では柳ケ浦に敗れ、全国高校選抜大会県予選では柳ケ浦に引き分けたがポイント差で2位突破。周囲の評価は決して高くなかった。それでも岩本総監督は、選手たちの内に眠る資質を信じていた。

その力が一気に噴き出したのが今大会だった。岩本総監督は試合の2日間、選手たちに「明豊に風が吹いている」と言い続けたという。1回戦の左沢戦(山形県)から代表戦にもつれる苦しい展開。それでも勝ち切った瞬間、「何か持っている」と手応えを感じた瞬間でもあった。見えない追い風に背中を押されるように、明豊は接戦を次々とものにしていった。
その象徴が大将の川浪絆(3年)である。今大会は4度の代表戦に立ち、重圧のかかる場面で何度も勝負を託された。川浪は「絶対に負けないという気持ちで戦っていた。体がきついというより、勝ちたい気持ちのほうが強かった」と語る。大将として、さらに代表戦まで背負う立場で「チームのために、自分が勝ち切らないといけない」という責任感を貫いた。その粘りと覚悟がチームを決勝まで押し上げた。決勝では競り負けたものの、大会優秀選手に選ばれたことが、その存在感を物語っている。
副将の高鍋藍(2年)も今大会の明豊を語る上で欠かせない。全6試合で負けなし。下級生ながら副将を任され、「試合に出ていない選手の思いを背負って戦った」と振り返る。責任も重圧もあったが、「下級生らしく思い切り剣道をした」と腹をくくった。得意の面を生かすために磨いてきた小手が勝負どころで決まり、準々決勝の福岡第一戦では、敗れれば敗退という場面で一本勝ち。一気に波に乗った。勝負の流れを引き寄せる強さは来年以降の主軸を予感させるものだった。

本来は川浪と渡辺愛菜(3年)の「2枚看板」で戦う構想だったという。だが、渡辺は大会前から調子が上がらず、今回は出番が訪れなかった。それでも準優勝までたどり着いたのは層の厚さの証明でもある。一方で岩本総監督は、全国高校総体で頂点を狙うには渡辺の復活が不可欠だと見る。川浪の成長、高鍋の台頭、そして渡辺の再起。この3本柱がそろったとき、もう一段高い場所へ行けるはずだ。
準優勝は悔しさの残る結果である。しかし今回は、それ以上に価値のある準優勝でもあった。苦しみ続けた世代が自らの殻を破り、全国の舞台で確かな手応えをつかんだ。頂点には届かなかったからこそ、夏へ向けて期待は高まる。
(柚野真也)
地区を選択
学校名を選択