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大分県高校野球選手権 成功体験を糧に進化誓う明豊 【大分県】

大分県高校野球選手権 成功体験を糧に進化誓う明豊 【大分県】

第148回大分県高校野球選手権
9月7日 佐伯中央病院スタジアム
決勝
明 豊  040 210 5|12
大分舞鶴 000 000 0|0(7回コールド)
*今大会から決勝でもコールドが適用

 今夏の甲子園で16強入りを果たした明豊が、8月20日から新チームとして始動した。県内で最も遅いスタートとなったが、川崎絢平監督に焦りはなかった。初めてのミーティングで必ず確認するのは二つの約束である。「最後の夏、自分がメンバーに入れなくてもチームのために動けるか」「仲間を大切にできるか」。その約束ができない選手とは野球をしない。監督の言葉は毎年変わらない。仲間を大切にすること、それが明豊野球の土台だからだ。

 新チーム発足からわずか10日余りで迎えた初の公式戦「第148回県高校野球選手権」。明豊は初戦から打線が爆発し、3試合連続で2桁得点。決勝では大分舞鶴に12―0で圧勝し、見事優勝を飾った。左腕エースの阪口純暉(2年)が先発し、初回こそ内野安打を許したが無失点で切り抜ける。すると二回、一死満塁の好機で9番・梅田勝叶(同)がスクイズを決め、さらに1番・小城瑛太(同)がセンターオーバーの三塁打で走者一掃。序盤で主導権を握ると、その後も四回に2点、五回に1点を加点。七回には6本の長短打を集中させ、一気に5点を奪った。15安打でつかんだ圧勝劇は、新チームの船出にふさわしい内容だった。

打線好調、全3試合で2桁得点を記録した

 川崎監督の表情は引き締まっていた。「勝てたことは良いこと。でも課題は山ほどある。むしろ心配なことの方が多い」と語る。大量得点での勝利にも慢心はなく、凡打の内容や緊迫した場面での対応に課題を見出す。成功体験を積むことは大切だが、それをどう次につなげるか。監督の視線はすでに先を見据えている。

 投手陣に対しても厳しい注文を忘れなかった。点差がある展開でこそ、よりテンポ良く投げ、攻撃にリズムを与えてほしいという。甲子園を経験した阪口には、チーム全体の流れをつくる投球を求めた。「甲子園を経験しているなら、もっと試合を支配できるはず」との言葉に期待の大きさがにじむ。

決勝では被安打2、無失点に抑えた阪口

 一方で、新戦力の台頭は光明だ。1番打者として攻撃の起点となった小城、勝負強さを見せた諏訪宏智(2年)に加え、梅田や鈴木翔太(同)、荒巻一太(同)、久恒汰央(1年)ら控え組の活躍がチーム全体に緊張感を生み、スタンドで見守った部員にも刺激を与える。監督は「秋は特にメンバーを固定したくない。これまでの評価にとらわれず、その瞬間に結果を出せる選手を使う」と語り、徹底した競争原理を貫く姿勢を示した。

 チームの強みは夏の甲子園予選で経験を積んだ選手の存在だ。捕手の宮元弾(1年)は落ち着いたリードで投手陣を支え、川口琥太郎(同)や加美隆之介(同)も実戦で結果を残している。主力の藤翔琉(2年)が離脱しているのは痛手だが、例年よりも経験値の高い選手が多く、厚みを感じさせる布陣となった。

 「秋は完成したチームで戦う夏とは違い、試合中に成長していく必要がある」。川崎監督はそう繰り返す。課題を見つけ、次の試合までに修正する。その積み重ねが来春のセンバツ甲子園につながる道筋だ。仲間を大切にし、厳しい競争を乗り越えながら磨かれていく新生・明豊。その歩みが再び全国の舞台へとつながっていく。

(柚野真也)