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全国高校野球大分大会 グッドルーザー 甲子園に届かずとも胸を張れる大分舞鶴エースの誇り 【大分県】

全国高校野球大分大会 グッドルーザー 甲子園に届かずとも胸を張れる大分舞鶴エースの誇り 【大分県】

第107回全国高校野球大分大会
7月26日 別大興産スタジアム
決勝
明 豊  000 000 101|2
大分舞鶴 100 000 000|1

 頂点には、またしても届かなかった。大分舞鶴は明豊に1-2で敗れ、2年連続の準優勝。試合後、スコアブックに残された「自責0」の数字が、エース秋田康介(3年)の奮闘を物語っていた。

 準決勝と決勝、2試合連続の完投。強豪・明豊打線を6安打に封じる気迫のピッチングには、河室聖司監督も「魂の投球だった」と声を震わせてたたえた。打者の手元で鋭く曲がる変化球とインコースを突くストレート。とりわけこの決勝では「高校生活で一番インコースを使えた」と本人も語るように、完成度の高い内容だった。

 ただ、勝利の女神は秋田に微笑まなかった。終盤までリードを守る理想的な展開。だが、失点2はいずれも守備の乱れから生まれたものだった。九回、ファーストゴロに打ち取った打球がエラーとなり、勝敗を分ける1点が入った。球場にどよめきが走る中、秋田は静かにマウンドへ向かった。

 仲間を責めることは決してなかった。「普段からノックで泥だらけになって頑張っている姿を見ている。守備のミスは自分が打たれたのと同じだと思っていた」。どんなに痛い失点でも、信じた仲間をかばうように秋田はただ真っすぐに腕を振った。チームを背負う覚悟と、仲間への信頼。それが、エースとして最後まで投げ抜いた力投の根底にあった。

魂のピッチングを披露した秋田康介

 昨年、明豊との決勝では8失点。屈辱の記憶が残るマウンドだった。「あの借りは決勝でしか返せない」。その思いを胸に1年をかけて球質を磨いた。特に変化球の精度向上とメンタル強化に注力。筋力強化で、体重は入学時の72kgから80kgへ。2サイズ大きめだったユニフォームは、今やピタリと体になじんでいた。

 その成果を、最も実感したのはライバル校の監督かもしれない。勝利した明豊の川崎絢平監督は、試合後にこう語った。「本当に素晴らしい投手。昨年よりもさらに成長して、大人の投球を見せてくれた。球速は140キロ台半ばとまではいかなくても、あれだけ完成された投球をされたら、何回やっても点が取れないと感じた。この世代では県内No.1だと思っているし、全国大会でも十分通用する実力の持ち主だ」。対戦相手から贈られた、これ以上ない賛辞。それは、秋田が歩んだ1年間の証明でもあった。

 昨年はエラーが出るたびに気持ちを乱し、試合を落とした。そして迎えた今夏。悔しさは尽きない。だが、秋田は確実に前へ進んでいた。どんな逆風にも折れず、チームを鼓舞する投球を貫いた。「負けたけど自分の成長は感じた」。その言葉がすべてだ。

 今後は大学に進学し、野球を続けるという。「大学でこの経験を生かして、すぐに活躍できるようにしたい」。その背中を後輩たちは見ている。甲子園は遠かった。だが、秋田の高校3年間は充実したものだったに違いない。

最高の仲間と3年間野球ができたと語った

(柚野真也)