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漂う大物感、大分商業のエースに注目 夏の甲子園予選2019

漂う大物感、大分商業のエースに注目 夏の甲子園予選2019

第101回全国高校野球大分大会

7月10日 第1試合 1回戦 別大興産スタジアム

大分商業 103 030 3|10

安心院  100 001 0|2(7回コールド)

 

 今年も大分商業が面白い。入学当初から大物ルーキーとして注目されていた川瀬晃(ソフトバンクホークス)の“弟”川瀬堅斗(2年)が、今夏はエースナンバーをつけてマウンドに登場した。腰の故障で3カ月投げることも走ることもできなかったが、今年5月頃に復帰した直後から145㌔のストレートをコンスタントに投げ込み渡辺正雄監督を驚かせた。すごいのは球速だけではない。投手に必要なマウンド度胸が並外れている。どんなに打たれても動揺することはなく、得点圏に走者を許しても「自分はピンチに強い」とギアを入れ直し、力で相手をねじ伏せる。

 

 安心院戦では9安打を浴びながら6回を2失点に抑えた。試合前に渡辺監督から「今日はコントロール重視でいい。6、7割の力で投げろ」との指令を守り、はやる気持ちを制御するのに苦労した。本来ならストレートで勝負するところを「変化球で三振を取ることを考えた。ギアも8割程度しか上げていない」と余力を残して降板。「自分のピッチングは微妙だったが、チームが勝ったのでよかった」と不完全燃焼で終わったが、ただ者ではないことは印象付けた。

 

高いポテンシャルを秘めた川瀬堅斗

 

 「川瀬の弟」という枕詞は今大会の活躍で消えるだろう。彼の名は川瀬堅斗、大商のエースを担う逸材だ。まだまだ原石であり、磨き方次第で爆発的な成長を予感させる。投手を育てるには、成功体験を重ねて自信を持たせるのが一番だが、川瀬にはその必要がない。「自分の力でチームを甲子園に連れて行きたい。自分がやってやるという気持ちが強い」と文字にすると高飛車に聞こえてしまうが、この言葉を屈託のない笑顔でさらりと言うところに一流の雰囲気が漂う。

 

 これまで多くのプロ野球選手を輩出した渡辺監督は、「アイツはイケイケなところがあるが、それをうまくコントロールして良いところを伸ばしたい」と、やんちゃな部分も成長を加速させるスパイスであることは承知だ。「今大会で150㌔を出す」と豪語するエースを、どのようにして大エースに仕上げるか楽しみだ。昨年も無名だった甲斐翔斗(3年)を4番に抜擢した名将である。クセの強い個性派集団を勝利へと導き、それぞれの個の力を磨く。

 

個性派集団をまとめる渡辺正雄監督

 

(柚野真也)