
県高校総体 バレーボール男子 仲間との絆で栄冠をつかんだ大分南 【大分県】
バレー
日本一を目指し全日本高校バレーボール選手権大会(春の高校バレー)に出場した東九州龍谷(東龍)。準々決勝まで危なげなく勝ち上がり、準決勝で優勝候補筆頭の下北沢成徳(東京)に逆転勝利する。決勝では連覇を狙う金蘭会(大阪)にフルセットの末に敗れたが、東龍の名を全国に印象付けた大会であった。
2回戦から登場した第3シードの東龍は青森西(青森)、3回戦で金沢商業(石川)に順当勝ちし、準々決勝でも京都橘にストレートで勝利。今大会の最大のヤマ場、高校3冠(全国高校総体、国体、春の高校バレー)を目指す下北沢成徳との対戦を迎えた。
試合前日の夕食後にキャプテンの平山詩嫣(3年)が声を掛けて選手だけのミーティングを開いた。「3年生にとって最後の大会となるが、1、2年生の力を貸してほしい。最後まで諦めない東龍のバレーをしよう」と呼び掛けた。この言葉に全員が奮い立ち、試合に臨んだ。「試合前から勝てると思っていた。負ける気はしなかった」と梅津憂理(3年)、「自分たちの最高を出せば勝てると思えた」と園田風音(3年)が話したように、1セット目から持ち味の粘り強いレシーブと高速コンビバレーは全開だった。レシーブからスパイクにつなぐ園田のトスワークも冴える。コートを横幅いっぱいに使い、相手のブロックを剝がし、得点を重ねた。
1セット目を先制し優位に試合を進めたかったが、そこは3冠を目指す相手が許さない。打点の高い強打を打ち込まれ2、3セットを連取され形勢逆転。「また3位で終わるかも…」。平山の脳裏には昨年夏の全国高校総体、秋の国体で3位に終わり、晴れ舞台を目前に涙を飲んだ苦い記憶が蘇った。大黒柱の心情を察知した合屋咲希(3年)は「一人で抱え込まなくていい。思いっ切り自分のプレーをすればいい」と声を掛け、ベンチにいた池島綸、古賀智代、原結実香、上永亜優の3年生も激励した。チーム一丸となった東龍は強い。相原昇監督が「3年生の思いが力になった。経験も実力も相手が上だったが勝ちたい思いが上回った」と振り返ったように、4セット目を執念で奪い返すと、最終セットは相手の強打を拾い続け、粘り強くつなぐ東龍のバレーボールで逆転した。
硬軟織り交ぜた攻撃でチームを引っ張った合屋咲希
劇的な勝利から一夜明け、2年連続同じカードとなった金蘭会との決勝。「昨年の先輩のリベンジを果たす。勝っても負けても今日で最後。最高のバレーをしたい」(園田)とコートに立った。試合は序盤から劣勢が続いた。1年生エースの室岡莉乃の渾身(こんしん)のスパイクがブロックされ、相手の高さとパワーに圧倒され7連続得点を許す。本来の粘り強くつなぐ守備は影を潜め、相手の猛攻を受けた。
これまでならば相手に力負けして、第2セット以降もずるずると失点を重ねていただろう。それを救ったのが3年生だった。園田の速いパスワークに呼応し、平山がコースを使い分け、梅津の強打、合屋の硬軟織り交ぜた攻撃でリズムをつかんでいく。攻撃が活性化すると守備も機能し、相手がうんざりするほど攻撃をはね返し粘った。得点を重ねて第2セットに競り勝つと、がっぷり四つに組み合い、それぞれセットを奪い最終の5セットまでもつれ込んだ。
相原監督は「準決勝も決勝も勝つなら3-2しかないと思っていた」と準決勝の再現を狙った。「このままでいいのか。ここからが勝負だぞ。最後なんだからやり切って終われ」とコートに送り出す。指揮官の思い、最後の大会となる3年生の思いを背に躍動するが、あと一歩及ばなかった。格上相手に連日のフルセット、心身ともに限界だったことは間違いない。きびきびとした攻防が緩むことなく続き、狙いの接戦に持ち込んだものの、最後は相手の高さとパワーに屈した。
今大会で見せた東龍のバレーボールは賞賛に値する。体格や身体能力で強豪校に劣る東龍は、多彩な攻撃や速いテンポのトスで得点力を上げた。サーブレシーブをはじめとした守備を徹底的に見直し、超低姿勢のレシーブスタイルでコートすれすれで相手の強打を拾う。そして隙を与えず、隙を突いていくしたたかな戦い方は実に頼もしかった。
「長いラリーを制し、魂のあるバレーを見せることができた。準優勝で終わったが、これまでインターハイ、国体で3位だったチームの最高記録が出た」と総括した相原監督の表情は誇らしく、全てを出し切った達成感があった。そして、選手は試合後こそ大粒の涙を流したが、「部員24人の力があってここまでくることができた。悔いはない」(平山)、「3年間の思いを全て出せた」(合屋)と笑顔を見せた。今大会の5試合で彼女らが歩んできた道筋の正しさと、可能性の高さを見せてくれた。
試合後、平山詩嫣は一人ひとりに感謝の言葉を掛けた
(柚野真也)
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