
由布高校ライフル射撃部 津田圭達(2年) file.841
ライフル射撃
銃を握ったのは小学4年の時だった。きっかけは母の「他のスポーツに挑戦してもいいのよ」という一言。それまで続けていた水泳を離れ、野村一生(いつき、別府翔青2年)は未知の競技に胸を躍らせた。回覧板に書かれていた体験会の告知に「面白そう」と心を動かされたのは、幼いころからアニメ「ガンダム」に熱中し、祖父の手作りゴム鉄砲で夢中になって遊んでいた少年らしい感性だった。
そんな野村が第49回九州高校ライフル射撃選手権大会の男子ビームピストル個人で、ついに初の頂点に立った。「ようやく自分の実力を出せた」と語るその表情は、これまで積み重ねてきた努力と、幾度となく味わってきた悔しさを思わせる穏やかな達成感に満ちていた。
実績だけを見れば、野村のキャリアは長い。全国大会の出場経験も豊富だった。ただ、記録や順位といった結果には恵まれなかった。だからこそ、この勝利には特別な意味がある。「今日は点数よりも、優勝することを狙っていた」と明言するほど、心のギアは勝負に合わせてチューニングされていた。
努力が実り九州王者となった野村一生
決勝は白熱した。予選2位で通過し、迎えたファイナル。上位3人が僅差で競り合う中、野村はわずか0.2点差での逃げ切り勝ちだった。技術とともに、最後にものを言ったのは「場数」だった。
「調子がいい時は、トリガーを引いた瞬間に的の中心が光って見える」。そんな「ゾーン」の感覚が今回は訪れなかったという。だが、野村は焦らず、自分を信じて撃ち続けた。「一発一発に集中する」。このスタンスにたどり着いたのは、つい最近のことだという。
点数と順位が明確な競技において、かつては「結果」がプレッシャーだった。しかし今は違う。銃と正面から向き合い、勝ち負けではなく、自分のパフォーマンスと向き合えるようになった。それが、この大会での野村の一番の成長だったのかもしれない。
7月には全日本高校生スポーツ射撃選手権が控える。そしてその先には国民スポーツ大会(国スポ)。野村は「悔いのない結果を出したい。国スポでも上位を狙う」と力強く語る。ようやく見えた勝利の先に、今度はより高い目標が待っている。
「全国大会で上位を目指す」と意気込む
(柚野真也)
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