
大分豊府高校カヌー部 北川和奈(3年) file.840
カヌー
5月に開催された「2025アジアパシフィックスプリントカップ」。日本代表としてこの国際大会に出場したのは、大分上野丘の山川響之介(1年)だ。中学時代には全国大会で実績を積み、急成長を遂げた逸材は、初の県高校総体に挑んだ。出場種目はカヤックシングル。しかし大会直前に負ったけがの影響で、本来の力は発揮できなかった。予選は突破したものの、決勝では壁を痛感する結果となった。
それでも山川の視線は常に前を向いている。持ち味は、スタートで一気に飛び出し、先行逃げ切りスタイル。その爆発的な加速力と、並ばれても前に出ようとする「気迫」がレースを動かす。集中力と勝負強さに加え、足の踏ん張りや体の回転でうまくタイミングを取り、スピードに乗せる技術に長けている。
小学5年で偶然見かけたチラシをきっかけに競技を始め、小学6年で九州大会を制覇。中学3年では国スポの九州ブロック、全国中学生カヌースプリント選手権といった大舞台を経験し、実力を一気に伸ばした。強豪との対戦で培ったのは、「速さ」に対する感覚と、水の捉え方。これらが血肉となり、今の走りにつながっている。
県総体では思うような結果を残せなかった
現在は、大分川で大分舞鶴や大分豊府の選手たちとともに「チーム大分」として週6日の合同練習に励んでいる。周囲のサポートに感謝しながらも、一人孤独に戦うシングル種目での勝利にこだわる。昨年の国スポでは4人乗り(フォア)で出場し、悔しい敗戦を経験。だからこそ、今年は個の力で勝ち切る姿を見せたいと強く誓っている。
一方で、山川にはもう一つの顔がある。進学校の上野丘を選んだのは「医師になりたい」という夢をかなえるためだ。カヌーを続けるだけでなく、将来への備えとして学業にも力を入れる。限られた練習時間の中でも、空き時間を使って胸筋を中心とした補強トレーニングなどを欠かさない。
今はまだ「日本一」のタイトルを手にしていない。だが、山川にはそれを手にするための計画的な努力と覚悟がある。医師を目指しつつ、カヌー界の頂点を狙う挑戦は、まだ始まったばかりだ。
再び国際大会の舞台に立つため、日本一のタイトルを目指す
(柚野真也)
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