手芸ウェルビーイング部 別府溝部学園 伝統80年の誇り 彩りで魅せた総文祭ステージ 【大分県】
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大分県高校総合文化祭のステージ発表。16人編成の臼杵高校箏曲部がその幕開けを飾った。山本邦山作曲「二つの幻想」第一・第二楽章。静と動が交錯する難曲に挑んだ。音色は早朝の空気のように澄み、会場に静かな緊張と期待を広げた。トップバッターという重責を担いながらも、舞台に並んだ瞬間の緊張がふっとほどけ、音に集中していった。

演奏後、週2回ほど指導する外部指導者は「今日の演奏には、これまで積み重ねてきた練習の成果が表れていた」と語った。大きな舞台に立つのは初めてのメンバーが多く、普段より落ち着きを欠いた部分もあったという。しかしその「揺らぎ」さえも、初舞台ならではの尊い経験であると捉えている。「今日見えた課題は次につながる。ここからの1カ月で確実に伸びる」と確かな手応えを感じていた。
部長の塩崎南月(2年)もまた、舞台の重みと向き合いながら演奏を終えた。「練習ではできていたことが、お客さんの前ではうまくいかない部分もあった」と正直に振り返る。一方で、練習してきたことを形にできたという小さな自信も手にしたようだ。特に「見られながら弾く感覚」を体で覚えられたことは、大きな収穫となった。
「二つの幻想」は、静かで穏やかな水面の波紋を思わせる第一楽章から、一変してリズムが躍る第二楽章へと展開していく。そのメリハリをどう表現するかがポイントとなるが、塩崎は「もっとテンポを落ち着かせ、全員の息を合わせたい」と今後の課題を見据える。
臼杵高校箏曲部は、12月21日の郷土芸能邦楽新人大会で自由曲としてこの曲に挑む。新人大会では自由曲と課題曲の合計点により最優秀賞が決まり、そこから全国大会への道が開ける。臼杵高校はこれまで「28年連続30回目の全国高校総合文化祭出場」を果たしており、伝統校としての誇りと責任を背負って舞台に立つことになる。

指導者は「十分な練習をしていれば、本番の緊張は乗り越えられる。自信は努力の量に比例する」と話し、生徒たちの背中を押す。部員たちもまた、その言葉を胸に、細部まで磨き上げた音を追求している。
静と動。緊張と集中。経験と成長。臼杵高校箏曲部の音は、12月に向けてさらに深まり、厚みを増していくはずだ。新人大会の舞台でどんな“二つの幻想”を描き出すのか、期待は高まる。
(柚野真也)
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