県高校総合文化祭 文化が結ぶ50回の鼓動 【大分県】
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50回の節目を迎えた大分県高校総合文化祭(総文祭)。その大舞台で、観客の目を奪ったのが別府溝部学園高校の手芸ウェルビーイング部によるファッションショーだった。テーマは「過去・現在・未来」。ステージの幕が開いた瞬間、白と黒の衣装が並び、時代を象徴する「過去」が淡く浮かび上がった。やがて照明が一気に色づくと、鮮やかな「現在」の世界が広がり、舞台の空気が一変した。ラストシーンでは、光沢をまとった衣装が「未来」への希望を照らし、会場全体が温かな拍手に包まれた。
このショーの特筆すべき点は、衣装づくりから構成、照明、演出に至るまで、すべて部員たちが手がけたことだ。顧問の二宮エミ教諭は「時代の移り変わりと前向きなエネルギーを感じてもらいたかった」と語る。授業でもファッションショーの組み立てに力を入れており、テーマ設定からチーム編成、演出の流れまで、部員が主役となって全体をまとめる。現場には「自分たちで作品をつくり上げる」という誇りが満ちていた。

衣装づくりの工程も本格的である。まずデザイン画を描き、型紙を起こし、仮縫いを経て本縫いへ。最後はアクセサリーやヘアメイクまで含めたトータルコーディネートで仕上げるという。本物のアパレル現場さながらのプロセスを、一つのステージのために積み重ねていく。時間と手間のかかる作業だが、部員たちは妥協せず作品を磨き続ける。
本年度、同部が手がけたショーは5回に及ぶ。日韓国交60周年記念ショー、私学フェスタ、学園祭、総文祭、そして地域の子どもたちと一緒に開く「みんなのコレクション」。いずれも構成、衣装とも異なる。同時並行で複数のステージを抱えるという状況も珍しくないが、部員たちは互いに支え合い、乗り越えてきた。二宮教諭は「正直かなりしんどいが、部員たちのやりきる力には驚かされる」と笑う。
部長の黒田南海(3年)はショーを終えて「みんなの団結力があってこそ。最高の舞台ができた」と語った。自身は演者としてステージに立ったため全体を見渡す余裕はなかったというが、観客の反応とフィナーレの拍手で、作品が確かに届いたことを実感したという。

今年、別府溝部学園高校は創立80周年を迎えた。長い歴史の中で、手芸ウェルビーイング部は唯一80年続く伝統ある部活動でもある。その重みを受け継ぐ現在の部員たちは、過去の技と思いを学び、今を彩り、未来へとつなぐ役割を担っている。
総文祭の華やかなステージに立った部員たちの姿は、ただの「高校生の発表」ではなかった。自らの手で未来を描く力を持つ、クリエイターとしての気高さがあった。
(柚野真也)
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