日本文理大学付属高校レスリング部 大畑建斗(3年) file.388
レスリング
コロナ禍の高校3年生たち⑤ レスリング 深水小鉄(日本文理大学付属) 果たせなかった日本一の目標は大学で
新型コロナウイルスの感染拡大で次々と大会が中止となった2020年。県や、それぞれの競技独自の大会で練習の成果を発揮できた者もいれば、不完全燃焼のまま競技を辞めた者もいる。多くの高校3年生にとって想定外だった1年間を振り返り、今後はどのような道を歩むのか、「コロナ禍の高校3年生たち」と題してそれぞれのドラマをひもといた。
3歳から始めたレスリング。父が学生時代にレスリング選手だったこともあり、「物心つく前から遊びの一環だった」と深水小鉄は振り返る。辞めたいと思ったことは何度もあったが、競技は「生活の一部だった」。小学校の頃はサッカー、中学は卓球部に入部したが、中学卒業と同時に親元を離れて日本文理大学付属高校に入学したのは「日本一の選手になりたかったから」。父親の勧めもあり、勝龍三郎監督の指導を仰ぐことになる。
初めての寮生活、環境の変化に不安はあったが、「同じ階級の人が複数いて部員も多い。先輩も優しかった」とすぐになじんだ。これまでは実戦形式の練習が多かったが、日本文理大学付属では技術練習が多く、「技のレパートリーが増え、覚えれば覚えるほど面白くなった」。積極的に自主練習に取り組むようになり、寮に帰ってからも動画を見ては翌日の練習で試し、体得する。3年間、変わらぬルーティンだ。得意技の「かぶり返し」も、多くの動画を研究して身につけた。
全国高校選抜大会で3位となった深水小鉄
夏の全国高校総体(インターハイ)、秋の国体、春の全国高校選抜大会の3つの主要大会には、1年時から連続で出場した。「1年のときは全国大会に出場するだけだったが、2年から少しずつ勝てるようになった」。今年3月の全国選抜大会が中止になったときは、「インターハイが3年間の集大成となる」と目標を定めた。しかし、コロナ禍で日本一の夢を絶たれ、無念を晴らす国体も中止。「春からずっと気持ちを切り替えてきたのに、試合さえできない。自分ではどうすることもできないから余計に腹が立った」。やり場のない悔しさを練習にぶつけた。
高校最後の夏が終わった頃、全国高校選抜大会開催の知らせを聞き、出場を即決。個人60㌔級にエントリーし、「3年間の思いをぶつけた」。危なげない戦いぶりで勝ち上がり、準々決勝では今まで一度も勝ったことのないライバルに勝った。悲願の日本一は目前だったが、3位に終わった。「勝てる試合だった。高校で日本一になる最後のチャンスだったので悔しかった」。日本一の目標は大学に持ち越しになった。今は次へのステップに向けて力を蓄えている。「自分に限界を作るな」。勝監督の教えを胸に今も練習に励んでいる。
実現できなかった日本一を大学で目指す
(柚野真也)