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3年生、夏物語 野球 明豊のエース 速さに頼らず空を切るキレ味 【大分県】

3年生、夏物語 野球 明豊のエース 速さに頼らず空を切るキレ味 【大分県】

 「明豊のエースは俺だ」。その強い覚悟が、最終決戦のマウンドから伝わってきたー。全国高校野球大分大会の決勝。6回、1点リードされた場面でマウンドを託された寺本悠真(3年)は、強打の大分舞鶴打線に一切の追加点を許さず、2対1で明豊を5年連続11回目となる夏の甲子園へと導いた。

 試合後、川崎絢平監督は「これまでの中でも5本の指に入る素晴らしいピッチングだった」と称賛を惜しまなかった。本人は納得がいかない様子を見せていたが、「何かを変えたのか、エースとしての責任感か。僕からは何も言っていない。ただ、気持ちで押し切った投球だった」と続けた。

優勝の瞬間、喜びを爆発させた

 寺本は昨年、春夏の甲子園のマウンドを経験した。以降、「相手に対策されても圧倒的なピッチングをしたい」と、球種のキレと制球に磨きをかけてきた。ストレートに加え、カーブ、スライダー、チェンジアップと多彩な変化球を操る。「どれでも三振が取れる決め球」と語るその自信が、投球からもにじむ。

 今大会は初戦から思うような状態ではなかった。ボールのキレや体の感覚にズレを抱えたまま、なかなか本来のパフォーマンスを出せずにいた。それでも寺本は、試合ごとに丁寧に修正を重ね、粘り強くマウンドに立ち続けた。そして迎えた決勝の舞台。「指のかかりが良かった。回転も良く、気持ちがボールに乗っていた。ストレートが走っていた」と自身を振り返る言葉には、確かな手応えと自負がにじむ。技術的なピークではなくとも、「絶対に抑える」という意志が、ボールに乗り移ったかのようだった。まさに、調子を気持ちで補い、エースの役割を全うしたピッチングだった。

 直球の最速は130キロ台中盤。それでも打者のバットは空を切る。右打者の内角を厳しく攻めたかと思えば、次はチェンジアップでタイミングを外す。左打者には外角いっぱいに直球を投げ込み、見逃し三振を奪う。持ち球の多さ、コントロール、そして腕の振りの鋭さが、球速以上の“キレ”を生み出している。「投げ間違いが少ない」と監督が評するように、構えたミットにボールが吸い込まれる精度の高さが光る。

 精神面でも2度の甲子園で鍛えられた。「打たれても点を与えなければいい」。そう語る寺本の投球には、揺るぎない自信と余裕がある。大崩れすることはなく、どんな場面でも自分の役割を冷静に果たす。

 3度目の聖地に立つ寺本は、先発でも中継ぎでも抑えでも、そのすべてでチームに安定をもたらす存在だ。速球派とは異なる円熟の投球術、そして「気持ちで押し切る」投球で、エースとして再び甲子園のマウンドで躍動するはずだ。

3度目の甲子園に向けて気合十分

(柚野真也)