
全国高校野球大分大会 グッドルーザー 遅球に誇りを貫いた中畑耀翔(中津北3年)の最後の夏 【大分県】
野球
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第107回全国高校野球大分大会
7月21日 別大興産スタジアム
準々決勝
大分雄城台 000 100 000|1
柳 ケ 浦 010 000 02×|3
第3シードの藤蔭に快勝し、12年ぶりのベスト8進出。大分雄城台の3年間の集大成は、準々決勝の柳ケ浦戦で終わりを迎えた。だが、選手たちは耀き、確かな爪あとを残した。
マウンドに立ったのはキャプテンの甲斐匠真(3年)。前の試合に続く先発登板だった。狙いは「先制点を与えない」こと。しかし、制球に苦しみ、二回に先制点を許した。それでもチームの心は折れなかった。四回、好機をつくり内野ゴロで同点とし、終盤勝負の展開に持ち込んだ。粘り強く守りからリズムをつくり、自分たちのスタイルを貫く姿勢は最後まで揺るがなかった。
「終盤で勝負する。それが我々の戦い方だった」と佐藤慎一郎監督は悔しさをにじませた。そのプランは八回、わずかなほころびで崩れる。エラー、ヒット、四球で満塁とされ、センター前に痛打を浴びた。
それでも選手たちは、自分たちのスタイルを最後まで貫き通した。守備からリズムをつくり、粘り強く食らいつく。それが三年間積み上げてきた雄城台の野球だった。リリーフでマウンドに上がった西郡映(同)も「今日は一番自分たちらしい戦いができた。でもそのスタイルで勝ち切れなかったことが何より悔しい」と言葉を詰まらせた。
このチームの出発点は監督交代とともに始まった。新監督が掲げた改革は、選手たちの心を揺さぶった。練習は厳しく、求められる意識の高さにも戸惑いがあった。「最初は温度差を感じた」と西郡は振り返る。それでも日々の鍛錬を重ね、苦しい冬を乗り越えるたびに、チームは少しずつ変わっていった。走り込みや振り込み、基礎練習を徹底し、積み重ねた汗と涙が心を一つにした。甲子園は遠い夢ではなく、現実の目標へと変わっていった。
試合後、甲斐は膝から崩れ落ち、大粒の涙を流した。「(新チームになってからの)1回戦敗退から始まり、ベスト8まで来た。でも最後は悔しさだけが残った」。泣き崩れた甲斐は、仲間に抱きかかえられながら何とか立ち上がった。その姿にはキャプテンとしての責任感と、すべてを出し切ったすがすがしさがにじんでいた。甲斐は胸を張った。「最後まで“全員野球”を貫けたことは誇り」。悔しさの中にも、仲間との確かな歩みがそこにはあった。
敗れた雄城台が残したのは、ただの結果ではない。積み重ねた努力と仲間との絆、そして“全員野球”の誇りだ。この悔しさを胸に、後輩たちはさらに高みを目指す。甲斐の言葉がそれを物語っていた。「俺たちの思いをつないで甲子園へ」。
(柚野真也)
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