
【指導者の肖像〜高校スポーツを支える魂〜】 全員が主役になる柳ケ浦式バスケ論 柳ケ浦高校バスケットボール部監督・中村誠(後編)
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第74回全国高校バスケットボール選手権大会県予選
10月31日 大分舞鶴高校体育館
準決勝 藤蔭65ー77明豊
準々決勝 藤蔭123ー47中津東
全国高校バスケットボール選手権大会(ウインターカップ)県予選で並々ならぬ闘志を燃やしていたのが藤蔭だった。大会を前に芦川尚子監督は、「この1年で一番仕上がりが良い」と手応えを感じずにはいられなかった。キャプテンの岩崎日香(3年)も優勝宣言こそなかったが「これまでやってきたことを出せば結果は付いてくる」と話していた。
県内の女子4強の顔ぶれはここ1、2年変わっていないが、王者は目まぐるしく入れ替わった。昨年のウインターカップ県予選では中津北、県高校新人大会は大分、県高校総体は明豊が優勝、翌日に再戦すれば王者は入れ替わるのかも、という紙一重の戦いの連続だった。その中で無冠だったのが藤蔭だった。「このままでは終われない」との思いは監督や選手からにじみ出ていた。
6月の県高校総体が終わって、敗戦の理由を洗い出した。雌雄を決するまでには、当日の試合展開、さらには本番を迎えるまでの環境など、数限りない要素が伏線となって結び付く。梅徳里季花(同)は「練習だけでなく私生活から、勝つために必要なことは何かを考えるようになった」という。
梅徳は2年時に転入してきたが、初めは“守備の人”だった。芦川監督が天性の手首の柔らかさを見抜き、シューターへの転向を勧めた。その日から毎日数え切れぬシュートを打ち、県内屈指の“3ポイントシューター”となった。一度入ると止まらぬシュートは相手にとって脅威となったが、自分のシュートパターンがある分、対策されやすい。3年生になってからは厳しいマークにあい、思うような形でシュートを打てなかった。それは今大会も同様だったが、守備やリバウンドでチームの勝利に貢献しようと率先して“汗かき役”となった。それでも目標の優勝に届かず、準決勝で敗退。梅徳は「万全の準備をしてきたけど、これでも負けたということは、もっと突き詰めなければいけないということ」と悔しさをにじませた。
3点シュートを放つ梅徳里季花
不完全燃焼に終わったのは岩崎も同じだった。準決勝の試合序盤で接触により足を痛め、動きは精彩を欠いた。ドライブからのシュートやインサイド、アウトサイドのどこからでも打てるジャンプシュートの成功率は低く、さらに前半で3つのファウルをし、アグレッシブなプレーは影を潜めた。試合後は「素直に自分の力が足りなかった。これまでやってきたことに自信を持てていたし、後悔もない。ただ、結果が出なかったということは何かが足りなかったということ」と敗戦の理由を見つけ出そうとしていた。
梅徳、岩崎とも冷静に言葉を選んで質問に答えていたが、どんな3年間だった?との問いに対しては、歩んできた日々に思いをはせ、言葉が詰まった。「苦しく辛いことの方が多かった。だからこそ勝ちたかったし、もっとみんなとバスケがしたかった」と涙があふれた。2人は次のステージとなる大学で競技を続ける。「(プレーや判断の)引き出しを増やしたい」と完成度を高めることを誓い、会場を後にした。
ドライブで仕掛ける岩崎日香
(柚野真也)
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