トリニータの歴史を彩った選手たちの今⑥ 吉村光示(大分トリニータU-18監督)

2020/05/09
  • 大分トリニータ

素材を育てることが現場の仕事

 

Q:指導者になって変わったことは?

 選手時代はいいことも悪いことも経験しました。試合に出ている選手はほっといてもいいとまでは言いませんが、出ていない選手との関わり方が大事だと思います。試合に出ていない選手が下を向いているチームは、全体の雰囲気が良くないし、乱す行為につながる可能性がある。トップチームでコーチをしていたときは、そこは特に意識していた。出ている選手は監督が見ればいいし、監督の求めることを表現すればいい。監督の表現したい場面に入れない選手に対して、怒ることも慰めることもあったけど、「チャンスが来たときのために準備をしておけ」とは言い続けました。

 

Q:スカウトと現場は、どちらが適正だと思いますか?

 スカウトも面白かったし、どちらも経験して思ったことは、いい素材を見つけても現場がうまく教えないと育たない。僕は素材をよくする側になリたいと思っています。出来上がった選手を獲得するにはお金がかかりますが、育成には時間と労力、忍耐力が必要。そして、育成に力をいれるチームであっても、ある程度の力を持った選手でないと大成しない。大分の育成クラブは見込みのある選手をゼロから育てていましたが、カテゴリーが上がってからは少しだけお金に余裕が出てきたので、半分ぐらい出来上がった選手を獲得して大分の色に染めるという感じになってきました。それは勝つために必要なことだし、今後も継続する必要があると思います。

 

Q:今季からU-18の監督に就任しました。

 片野坂知宏監督の下で勉強させてもらったことは大きい。U-18では、その部分を落とし込みたいです。ただ、何せこの状況なので落とし切れていない。選手は本当にかわいそう。家にいるだけですからね。ただ、プロになるために考えから技術、体力など、足りないところを本人が分かっていないことが多々ある。この期間に、プロになるためには、これが足りないよ、あれをしないとねというのを教えています。

 

Q:アカデミーの総仕上げとなるU-18のプレッシャーは?

 プレッシャーはないです。大学を経由してプロになった国分伸太郎(大分→北九州)がよい例で、大学でもまれた方がいい選手もいる。高卒でパッとプロに上がって埋もれて消える選手は何人も見てきました。しっかりと体をつくって、トップで使える選手になる選択もある。そういう話はしようと思っています。トップチームに上がるか上がらないかは、そのときのチームの状況があるので自分たちで決められないが、U-18の選手の情報は逐次伝えています。

 

Q:プロで活躍する選手とは?

 分かりやすくいうと一つでも特徴があること。誰にも負けない何かの武器を持っている選手は活躍します。大分でいうなら岩田智輝。プロ1年目から見ていますが、当時から年代の代表には入っていましたが、あくまでも素材でした。前線に関わっていく運動量があり、足りないものが多かったなかで苦手をなくしていって、日本代表に選ばれるようになりました。僕としては、確かな技術を持った選手を育て、何か秀でる武器を持たせたいと思っています。

 

Q:トップチームに望むことは?

 優勝に絡んでほしいです。すぐに優勝は難しいが、できない話ではない。常に6位に入れるようになり、チャンスがあれば狙ってほしい。ユニフォームの胸の星を増やしてほしいです。

 

 

■プロフィール■

よしむら・こうじ/1976年4月13日生まれ、高知県出身。広島→神戸→大分→福岡→横浜FM→岐阜、大分トリニータ在籍は2年間。J1通算229試合12得点、J2通算19試合1得点。クレバーな選手として広島、神戸でプレーし、大分在籍時は2度の降格争いを強いられたが残留に貢献した。2008年に引退し、16年に大分のヘッドコーチに就任、今季から大分トリニータU-18監督に就く。

 

 

(柚野真也) 

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