
珠玉の一枚 Vol.41 【大分県】
その他
夏場の体育館は過酷だ。5kg以上ある防具を身に付け、2mを超えるなぎなたを持つだけで汗が吹き出す。しかし、インターハイの舞台に立つ選手は誰ひとりとして下を向く者はいない。
現在、部員数は8人。毎年、個人や演技競技ではインターハイや九州大会へ出場を決めているが、人員的な問題もあり団体戦の代表権を獲れない年が続いた。昨年の県高校総体も、今年と同じメンバーで挑んだがあと一歩届かなかった。
その悔しさが彼女たちの結束力を高め、今年4年ぶりの頂点に輝いた。周りからのアドバイスを、自分たちなりに咀嚼(そしゃく)できるようになった心の成長がチームを優勝へと導いた。
「まずは自分のできる事をすること。そして、最後まで集中を切らさずにやりぬく事」。小野博美監督の思想は、シンプルだが芯の強さがある。試合における緊張感の大切さを日々伝えている。
どうしても結果だけに目が向く選手たちに、勝ち上がるイメージを持ちながら練習に取り組む姿勢を徹底。また、個性が光るチームでありたいと、選手それぞれに合った戦術を模索する。選手たちの目線に立ち、生まれた信頼関係こそがチームの強さへと変わっている。
なぎなたの世界は「気体剣一致(きたいけんいっち)」。気は声、体は身体、剣はなぎなたを表し、すべてが一つになった時にだけ「有効」が生まれる。どれか一つが足りなくても、あり過ぎてもいけない。暑い夏の日も、寒い冬の日も厳しい練習で鍛え上げた、ブレない精神を武器にインターハイに挑む。
(左)得丸 (中)川野 (右)名和
川野真奈(3年)
ただ1人の3年生であり、部を率いるキャプテン。姉の影響もあり5歳からなぎなたを始めた。高校1年生の時は試合に出られず悔しい思いをしたが、昨年は名和栞と組んだペアで全国5位となり大きな自信へとつながった。この3年間で学んだのは「素直に聞き入れること」。少し頑固なところがあると自分を分析するが、なぎなたを通して人の言葉を受け入れる柔軟さを身に付けた。「演技も団体も出るので、今年はもうひとつ上へいきたい」と最後の夏に全てを懸ける。
名和栞(2年)
人一倍負けず嫌いであり、勝負にこだわるチームのエース。6歳の時、大分市の「東部なぎなたスポーツ少年団」の見学で出会った先輩に憧れて、大分西高校へと後を追った。昨年は、1学年上の川野真奈とペアを組みインターハイの演技で全国5位となった。今年は得丸友梨香とペアを組み昨年以上の成績を狙う。「団体も、自分が獲って勝つくらいの気持ちを持って挑みたい」と意気込みは熱い。チームの士気を上げる2年生エースの活躍に期待したい。
得丸友梨香(2年)
常にストイックで前向き、我慢強いタイプと小野博美監督は分析する。10歳の頃、友達に誘われてなぎなたを始めたが、高校に入り基本から全てを学び直したと言う。「打突の仕方もジュニアのころとは全然違った。でも、先生や先輩に認められると本当にうれしい」。また、寡黙に前だけを見る彼女にとって、身に付けたのは技術だけではない。なぎなたを通して磨かれた精神力で自分の意見もハッキリ言えるようになった。心身ともに成長した得丸がチームの流れを引き寄せる。
笑顔でインターハイでの活躍を誓った3人
(塩月なつみ)
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