監督の哲学① 「判断は一つではない」大分東明高校ラグビー部・白田誠明監督

2020/03/12
  • HEADLINE

 もちろんコンタクトプレーの多いラグビーにおいて、フィットネスの強化、接点で勝てるだけのパワーは基本装備しなければならない。「基本レベルに達するまでは練習はやり込んだ方がいいに決まっている」。大分東明に赴任した際、全国常連の大分舞鶴と同じような練習メニューを課すと選手は音をあげた。ラグビーが好きで、ラグビーがやりたくてラグビー部に入ったのにラグビーが嫌いになったと言われ、「全国で勝つための道は見えても、選手を全く見ていなかった」と、もう一度指導論を見つめ直した。練習の意図を理解させ、意欲、達成感を味わうために小さな目標を立て、着実にステップアップできるように選手と話し合いながら目標を立てるようになった。

 

 全国への道は小さな成功体験からはじまる。「一つ一つの目標をショートステップとした」。ラグビーはディフェンスもアタックも組織、決まりごとの上で成り立つ。パスやタックル一つを切り取っても、直前の動き出しや流れをビデオで分析し、実戦で試してはまた分析する。それぞれのプレーにテーマを持って小さなPDCAサイクル(計画・実行・評価・改善の仕組み)を繰り返す。「はじめは次のプレーの予測が一つか二つくらいしかできなかった場面でも、三つ四つと増え、それがチームで共有できるようになったらラグビーは楽しくなる」

 

 白田は監督として経験を積んでいくなかで、指導者として一番大切な要素を感じ取ってきた。「プレーするのは選手だから、彼らに気持ち良くやらせることが結果を出す一番の近道だと思う。監督の示す戦術は判断をしやすくするためのものであって強制するものでない。要は選手が気持ち良いプレーが自然とできるようになればいい。ベンチを含めてそういうメンバーが集まれば、チームは勝てるようになる。日々の練習では50、60人の部員を見ながら、そういうグループをつくっていくことになる」。理想のチームは、指導者がいなくても全てが回るチームだという。そのためには「ディシプリン(規律)が基本になる」。

 

 ラグビーではイマジネーションやクリエーティビティというものが重要だ。とりわけトライを奪うという作業のなかでは欠かせない要素だろう。ただし、それらは、ある程度の枠組みのなかで発揮してこそ生きてくるものだと、白田は確信している。監督として重要なのは、それぞれの判断を尊重し、ラグビーの楽しさを伝えることであって、チームづくりにおいてはディシプリンが大切だと説く。あくまでも戦術、スタイルは勝つための方法論の一つでしかない。

 

「戦術は勝つための方法論の一つでしかない」と語る

 

プロフィール

 

白田誠明

1976年4月9日生まれ、O型、城東中学→大分舞鶴高校→中京大学

指導者として譲れないものは?

エンジョイラグビー

勝てるチームの条件とは?

それぞれの選手が状況判断できる

高校生の自分にアドバイスするなら

もっとルールを覚えろ。情報ばかりの頭でっかちになってはいけないが、戦術を学び、頭を使ってプレーしなさい

自己分析バロメーター

攻 撃 的 ○○●○○守 備 的

個 人   ○○○●○組 織

スペクタクル○●○○○リアリズム

理 論 派 ○●○○○感 覚 派

 

 

(柚野真也)

  • LINEで送る

関連記事

ページトップへ