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トリニータ 松本怜 自己ベストを上書きする日々

トリニータ 松本怜 自己ベストを上書きする日々

 プロ10年目、31歳になった松本怜は今季も充実したシーズンを過ごしている。現在リーグ戦全試合に先発出場。昨季はプロ入り後初めて全試合に出場しており、自己ベストを更新中だ。ポジションはMF、中盤の右サイドを主戦場とし、スピードを生かした突破を武器としながら、パス交換でサイドを切り崩すこともできる。昨季の10アシストはチームトップであり、今季もクロスから決定機を幾度も演出する。

 

 この選手の素晴らしさは他にもある。「顔よし、声よし、姿よし」。イイ男の条件を全て備えているだけでなく、サッカーIQも高い。2013年に大分に加入した当初は速さだけが取りえの選手だったが、スピードを持ち味とする選手に多い筋肉系のけがが多く、満足にプレーできなかった。その頃から体調管理に気を配り、スピードに頼らないプレーへとマイナーチェンジするようになった。

 

 片野坂知宏監督との出会いも大きかった。勝つために確固たるプレーモデルを作り、行き届いた戦術的コンセプトを遂行する指揮官のサッカーに多大な影響を受けた。「相手にとって嫌な場所でボールを受けたり、立ち位置を変えるだけで効果的な攻撃も守備もできることを知った」(松本)。指し手のように盤上全体に関心が向かうようになり、理詰めの作業を好むようになった。味方に使われる選手から使う選手になったことで、プレーの幅が広がり、出場時間を飛躍的に伸ばしたのだ。

 

今季もチームに欠かせない存在となっている

 

 J3を経験したこともサッカー観を変えた。「プロリーグと呼ぶにはどうかと思う環境で試合をしたことで、必ずJ1に返り咲きたいと強く思うようになった」と述懐する。目標に向かって突き進む精神的強さと努力で、ようやくJ1の舞台にたどり着いた。下積みがあったからこそ今があると感謝する。

 

 そして、今季のJ1で番狂わせを巻き起こしている好調なチームの要因を、松本はこう説明する。「昨年とやっていることは変わらないけど、継続してやっているからお互いのことが理解できる」

 後方からしっかりとパスをつなぎ、相手の変化、隙を見つけると一気にスピードを高める。そしてゴール前でダイレクトプレーを頻発できるのも、お互いの動きを分かり合えているからこそ。

 

 継続性だけでなく、個々の意識の高まりも要因の一つという。「新加入選手が入り、各ポジションで競争が激しくなった。昨年よりレベルアップしないと試合に出られない危機感は常にある」という意識が、チーム力を上げているのだろう。「まだ何も成し遂げていないが、今季が終わった時に充実したシーズンだったと言いたい」。己の成長を感じながら、自己ベストを上書きする日々を過ごしている。

 

31歳になっても成長を続ける

 

(柚野真也)