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トリニータ ベンチメンバー活躍の陰に“修行”あり

トリニータ ベンチメンバー活躍の陰に“修行”あり

 大分トリニータJ1昇格報告会でサポーターの喜ぶ姿をうれしそうに眺めていた。選手を背にしたバックスクリーンに今季の名場面の映像が流れ、サポーターと一緒に選手やスタッフが振り向いて見ていた時に修行智仁だけ前を向いていた。

 

 「サポーターも選手もみんな笑顔だった。選手として大分でやれることはもうない。この4年間で全てやり切った。その覚悟でこの1年を過ごしてきた」

 

 契約満了に伴い、今季でトリニータを去る。今季の出場記録はなかったが、メンタルリーダーとして、自分のこと以上にチームのことを考えた。勝利の裏にベテランGKの支えがあったことは間違いない。

 

 今季の大分の特徴として、途中交代の選手や出場機会に恵まれていなかった選手が活躍し、チームに勢いをつけた。41節の金沢戦で決勝点を決めた川西翔太は途中出場だったし、その試合で先発した岩田智輝は25節から、前田凌佑は26節から先発に定着したが、それまでほとんど試合に絡めずにいた。本人たちが腐らず努力した結果であるが、気持ちが折れそうなときに支えたのが修行だった。

 

 岩田は「シュウさん(修行)がいなかったら今の自分はない」と言い切り、前田も影響を受けた一人で「どんな状況でも練習でベストを尽くし、常に試合に出る準備をしている姿を見てきた」。川西は「チームがお前を必要とするときが必ず来ると言われメンタルを維持できた」と修行の一言に救われたと言う。

 

メンタルリーダーとしてチームを支えた修行智仁

 

 片野坂知宏監督の選手選考には三つの基準がある。一つ目はゲームプラン、二つ目はコンビネーション、三つ目がコンディションだ。ゲームプランとコンビネーションは、指揮官の采配に委ねられる。例え試合でベストパフォーマンスを見せて得点したとしても次の試合に出場できる保証はないのだから、シーズンを通してモチベーションを保つことは容易ではない。

 

 修行にも苦しんだ時期はある。だが彼は清々しい表情で言った。「このチームでJ1に上がりたい」。そのために“見えない仕事”を率先すると決めた。自分のこと以上にチームのことを考え、チームを引っ張り、仲間を盛り上げ、一番真面目に練習し、誰よりも努力した。試合に出られず心の火が消えかけた選手に対し、クールダウンのランニングで並走しながら「腐っている時間がどれだけ無駄な時間を過ごすことになるのか」を説いた。食事に誘い、たわいもない話をして心を解きほぐしたことは一度や二度ではない。今季、多くの選手が修行の心遣いに救われた。

 

 勝っても負けてもおごることもなく、チームのために尽くそうと努力する。今季一度もピッチに立っていない地味なヒーローの存在を知ってほしい。

 

今季も誰よりも努力を惜しまず練習した

 

(柚野真也)

大会結果