大分上野丘高校ラグビー部 佐藤武信(3年) file.827
ラグビー
全国高校ラグビー大会県予選決勝 逆転許すも底力を発揮し、大分舞鶴が33連覇達成
第98回全国高校ラグビー大会県予選の決勝が11日、大分市営陸上競技場であった。大分舞鶴が大分東明を19-14で破り、33年連続57回目の優勝を決めた。
3年連続同カードとなった決勝は、大分舞鶴が前半20分にラックから先制。27分にもトライを追加した。前半終了間際に1トライを許し、流れが変わった後半は防戦一方となり15分に逆転されたが、その後は得意の密集戦に持ち込み、後半23分にモールからトライを奪い逆転し、そのまま逃げ切った。
試合終了の合図が鳴ると、グラウンドにひざまずく者もいれば、笑顔で喜びを爆発させる者もいた。大分舞鶴がしびれる接戦を制した。
準決勝の接触プレーで脳震とうを起こし、決勝に出場できなかったFWの核となるキャプテン・佐々木康成の穴は大きかった。試合序盤から大分東明の攻撃を受ける苦しい時間が続いた。「かなり苦戦するとは思っていたが、その中でFW(フォワード)が意地を見せてくれた」と堀尾大輔監督。ゴールライン1㍍手前まで侵入されるも、粘り強い、低いタックルで相手を倒し、トライを許さなかった。
前半20分に先制してからは、FWとBK(バックス)が一体となった展開ラグビーに転じ追加点も奪ったが、主導権を握る時間は長く続かなかった。いつしかボール争奪局面で優位に立たれ、相手に上回られた。前半終了間際にトライを許し、ハーフタイムで修正を図ったが改善されなかった。
後半は攻め込みながらも密集でボールを出せない反則やミスが目立ちはじめる。後半15分には逆転を許し、今大会初めて追う展開となった。しかし、選手に焦りはなかった。「自分たちには立ち返る場所があった」と成重颯人(3年)。自陣ゴール前まで何度も迫られても押し返し、伝統の密集戦に持ち込んだ。圧力の強度は落ちず、相手の勢いを封じると、試合巧者の顔が戻る。FWがラックの中のボールを拾い、ラックサイドを縦に突くピック&ゴーがハマり、逆転した。
苦戦は覚悟の上だったが、「ここまで接戦になるとは思っていなかった」(横田佳音・3年)のが正直な感想だろう。それでも致命的な相手の突破を許さない守りは秀逸だった。欲を言えばBKを使った攻撃でリードを広げたかったのは確かだ。SO(スタンドオフ)松島聡(3年)は「BKの出来が悪かった。展開できず苦しんだ」と猛省した。全国に向けて、まだ修正できる時間はある。「細部まで突き詰めて、やり切るだけ」(松島)と1トライの難しさを再確認した経験を生かしたい。
苦戦したが33連覇を達成した大分舞鶴
喜びの声
成重颯人(3年)
「(キャプテンの佐々木)康成を花園に連れて行ける。まずはほっとした。今日の試合は康成がいなかったが、全員が頑張って苦しい状況を乗り越えられたのは収穫」
横田佳音(3年)
「(左肘靭帯損傷、全治45日の)けがの痛みはあったが試合になったらアドレナリンが出て、何とかなった。正直なところFWのメンバーが2人欠け、苦しい試合となり、痛みどころではなかった。勝って泣いたのは初めて。ここまで接戦になるとは思っていなかった」
福山浩太郎(3年)
「FWに頼る部分が大きかった。終盤は時間を考えて安定感のあるFW勝負で安全に策を取った。花園ではBKの機動力を生かした展開ラグビーをしたい。目標のベスト8を達成したい」
松島聡(3年)
「試合に出場できなかったキャプテンを『花園に連れて行こう』と、みんながまとまった。今日はFWが頑張ってくれたのにBKの出来が悪かった。展開できず苦しんだので花園までに修正したい。細部まで突き詰めて、やり切るだけ」
井上光(3年)
「自分のキックミスで危ない場面を作ってしまった。これまでにない緊張というか、試合の雰囲気に飲まれた部分がある。BKを使った展開ができなかったので、花園ではBKが主体となるラグビーをしたい」
(柚野真也)